静かに着実に進んでいるQT(量的引き締め)
FRB(米連邦準備制度理事会)の11月末時点のバランスシートが公開された。それによると、FRBが保有するバランスシートの総資産は4月にピークをつけて以降、3,810億ドル減少し、8兆585億ドルと、2021年11月3日以来の低水準となった。1カ月前と比較すると、総資産は920億ドル減少した。
連銀のバランスシートの推移

WOLFSTREETの記事「Fed’s Balance Sheet Drops by $381 Billion from Peak: December Update on QT(FRBのバランスシートはピーク時から3,810億ドル減少:QTについての12月のアップデート)」を参考に確認してみよう。
FRBが保有する米国債は、月半ばと月末に満期を迎え、その時点でFRBのバランスシートからロールオフされる。
6月上旬のピーク以降、米国債の保有残高は2,550億ドル減少し、5兆516億ドルとなり、2021年10月27日以来の低水準となった。11月3日のバランスシート以降、過去4週間で、FRBの保有する財務省証券は590億ドル減少した。
連銀が保有する米国債残高

過去の危機における連銀の総資産の推移

QT(量的引き締め)が確実に進んでいる。その影響は直接的には目には見えないものの、静かにしかも着実に経済に広がっていく。
QE(量的緩和)は資産価格の大幅なインフレを引き起こした。QTはQEとは逆の作用をもたらす。債券や株価が1年前より大幅に下落し、暗号資産が崩壊し、住宅価格が下落し始めるなど、すでにその影響が現れている。
連銀の総資産の増減とビットコイン相場は連動している

モルガン・スタンレーのストラテジー・チームは、「QTは、緩やかな金利正常化が始まると予想される2023年12月の前後で終了する可能性がある。QTは二つの理由で突然終了する可能性もある」と予測している。
(1)景気後退によりFRBが100bp以上の利下げを検討せざるを得なくなる場合
(2)2020年3月や最近のギルト(英国債)市場に見られるような市場の機能不全
いずれにせよ、QTの解除はまだまだ先だ。
今日、積極的なFRBの政策は海外に大混乱を引き起こしている。日本のように経済成長が鈍化し、債務が増加している国には、金融引き締め的なFRB政策に対応する余裕はない。
ゼロ金利とQEでFRBに対抗しようとしているが、その結果は円安とインフレ率の上昇である。欧州、中国をはじめ、ほとんど全ての国が同じテーマのバリエーションに直面している。
直近の二つの弱気相場を参考にすると、インフレが一段落し、金利の休止期を経て、FRBがいよいよ利下げに入ると、株式市場はさらに18~22カ月間下落を続けることになる。
米国株式市場の<長期の買い場>の答えはもう出ているのかもしれない。それはおそらく「QE5」となるだろう。
米国株市場は連銀の総資産と連動している
