外債投資、利回りが高いのが魅力だが、通貨下落リスクに注意
それでは、ここから外債投資の基礎を解説します。投資対象を、先進国の国債に限定してお話しします。信用リスクの高い債券(ジャンク債)や、過重債務をかかえる新興国の国債は対象外として説明します。
【1】外国国債への投資魅力は、日本の国債より「利回りが高いこと」
日本では、10年国債利回りが日本銀行の金融政策によって0%近辺に固定されています。そのため、円建ての債券に投資しても高い利回りは得られません。そこで目につくのは、金利の高い外国債券への投資です。
<世界各国の10年金利(10年国債利回り):2022年11月21日>
【2】外国の国債に投資する代表的リスクは、「通貨下落リスク」
相場格言で「There is no free lunch(ただのランチはない)」とあるように、高い利回りには、それに応じたリスクがあります。もっとも代表的なリスクが、「通貨が下落するリスク」です。
米ドル建ての米国国債で説明しましょう。今、1ドル140円くらいです。日本の個人投資家が1ドル140円でドルを買い、利回り3.8%の米国10年国債に投資して償還まで持ち続けるとしましょう。10年後も1ドル140円のままならば、償還資金を円に戻すと、10年間年率3.8%の運用ができたことになります。
ところが、10年後に1ドル100円まで円高(ドル安)が進んでいたとしましょう。すると、米国債の償還資金を円に戻したときに、為替差損(償還元本の目減り)が発生します。当初140万円の投資資金を使って米国債に投資していたとすると、償還元本は100万円に目減りしています。毎年3.8%の利回りを得ていても、そのほとんどが円高差損で消えてしまいます。
近年、対ドルで、猛烈な円安(ドル高)が進んだので、「円高になるリスク」と言われてもぴんと来ない人がいるかもしれません。これからも、どんどん円安(ドル高)が進むに違いないと思い込んでいる方も多いかもしれません。
将来のことはわかりませんが、歴史的な経験則では、「金利が高い(インフレが高い)国の通貨は、金利の低い(インフレが低い)国の通貨に対して、長期的には下落する可能性」があります。ドル/円為替レートの動きについて、さらに詳しい解説をお読みになりたい方は、以下のレポートをご参照ください。
2022年10月26日:円はどこまで売られる?政府・日銀が買っても買っても、売られるのはなぜ?
【3】高金利国ほど、通貨が下落するリスクが大きい
上記の表で「高金利国」として挙げた国は、いずれも対外負債が大きい国です。海外からたくさん借金をしているので、高い金利にしないと国債が発行できなくなっているわけです。
対外負債(借金)の大きい国ほど、長期金利が高く、長期的に通貨が下落するリスクが高いといえます。一方、日本は世界最大の対外純資産を保有し、日本の国債のほとんどを国内で調達しているので、長期金利を低く押さえ込めているといえます。
ちなみに、トルコの通貨であるトルコリラの対円クロスレートは、以下の通り、年々大きく下落してきました。
<1トルコリラの価値(対日本円):2011年1月~2022年11月(20日)>
いくら利回りが11%台で高くても、こんなに通貨が下落すると、投資元本が大きく減り、損失が発生してしまいます。
この例でわかる通り、外債投資は利回りが高ければ高いほど良いというわけではありません。金利がほどほどに高く、経済がそこそこ安定している国を選別して投資していくことが大切です。米国国債やオーストラリア国債などが投資対象として良いと判断しています。一つの国に集中投資するのではなく、多数の先進国に分散投資した方が良いと思います。