今日の為替ウォーキング

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井戸の水がかれるまで、水の価値はわからないもの - イギリスのことわざ

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 岸田首相は9月30日、新たな総合経済対策の策定を、10月末をめどにとりまとめるように関係閣僚に正式に指示した。総合経済対策の柱は、物価高騰への取り組みや円安対策だ。

 参院選(7月10日)の時点で、すでに1ドル=136円の円安だったが、現在はさらに約10%も円安が進んでいる。この3カ月間、一体何をやっていたのだろう。 

 急激な円安に対する「前例のない思い切った対策」として、岸田首相は新型コロナ水際対策の緩和による訪日観光需要回復、そして「円安メリットを生かす海外展開を考えている企業1万社を支援する方針を示した。

 政府の円安対策というのは、「円安のメリットを最大限引き出し、国民に還元する」ということだ。つまり還元率を高めるためには、円安を止めるのではなく、その逆で、円安を全力で応援するということになる。

 政府にとっての理想は、「ファンダメンタルズに基づく安定的な円安」だ。急激な円安は困る。しかし円高にリバースするのはもっと困る。問題は、円安は日本企業にとって、かつてのような利益をもたらしていないことだ。製造業のほぼ4分の1はすでに海外に移転し、かつて密接だった為替レートとの関係も今や破綻している。

 岸田文雄首相は17日、円安について「投機の動きも絡んだ急激な為替の変動は誰にとっても好ましくない」と述べた。しかし、どの取引が投機でどの取引が実需なのか判断するのは不可能である。なお、ドル/円には、22日以降の円安の動きは1日0.40円程度で、決して急激な変動ではない。むしろG7通貨のなかでは最もボラティリティが低かった。

 円安トレンドが本格的に転換するためには、日銀がYCC政策を引締め方向に修正するか、あるいはFRBが利上げサイクルを終了(休止)することが必要条件になるだろう。

 とはいえ、綿々と受け継がれてきた至高の「無為無策」政策を日銀が簡単に放棄するとは期待できない。パウエル・ピボットが死んだことを、ドットチャートがはっきりと指し示している。

今週の 注目経済指標

出所:楽天証券作成