バリュエーション面で世界の株式に割安感も
世界株式が下落に追い込まれたことによる唯一の朗報(?)は、株価が一時と比べ安くなったことです。特に、年初の高値から2割以上の下落を強いられた米国株(S&P500ベース)の予想PER(株価収益率)は16倍台に低下。
米国株の平均ROE(自己資本利益率)が22%強であることを勘案すると、警戒されている景気後退が一時的でマイルドなものである限り、すでに割安圏にあるといえるでしょう(図表2)。
特に、米国株の予想PERが20倍から24倍で取引されていた2020年から2021年までと比較すると、現在の予想PERの低さがわかります。
とはいっても、予想PERが低下してきた要因として、高インフレを反映して債券市場金利が上昇してきたことや、景気(企業業績)を巡る先行き不透明感が強くなっていることも挙げられ、当面も株式のボラティリティ(変動率)が高まりやすいことに留意するべきです。
<図表2>米国株にバリュエーション面で割安感も
株式のバリュエーションが見直されるには、先行きの金利を巡る不安が落ち着くことがカタリスト(きっかけ)として重要です。
図表3は、2019年以降における米国の政策金利(FF金利の誘導目標上限)、政策金利の動向に敏感な短期債金利(2年国債利回り)、長期債金利の推移を示したものです。9月に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)は、最新の経済・金利見通し(予想の中央値)の中で、政策金利を2022年末までに4.4%、2023年末までに4.6%に引き上げることを示唆しました。
ただ、S&Pケースシラー住宅価格指数の伸びが鈍化に転じるなど、CPI(消費者物価指数)の約3割を占める住居費(帰属家賃)が減速し始めたことは、インフレの抑制に追い風とみられます。先週末からの長期債金利低下を好感し、米国株式が反発に転じた動きに注目したいと思います。
特に、10月13日に発表されるCPIでインフレの峠越えが確認されると、債券も株式も底入れ感を強めていくことが見込めると思われます。
<図表3>株式の本格反発には債券市場金利の安定がカギに