火力発電拡大で一般炭価格が上昇、冬場に一段の値上がりも

 中国では8月の火力発電量が前年同月比15%増という予想外の伸びを記録する中、一般炭(発電燃料用)価格が8月中旬から上向きに転じた。BOCIは旺盛な需要や輸入量の低迷、相対的な低在庫を理由に、今冬に向けた一般炭価格の一段の値上がりを予想。2022-2024年の平均スポット価格に関する予想値を10-20%上方修正し、石炭セクターに対する従来の中立見通しを強気に引き上げた。個別では中国中煤能源(01898)とエン鉱能源(01171)をトップピック銘柄としている。

 中国では記録的猛暑と雨不足で8月の水力発電量が前年同月比11%減少。火力発電量が15%増え、結果的にベンチマークとなる秦皇島港の一般炭(5,500キロカロリー種)スポット価格が6週間で24%上昇し、9月19日には1トン当たり1,408元に達した。

 BOCIは冬場に向け、一般炭価格が次の上昇局面に入ると予想する。国内経済の回復や水力発電の停滞、石炭輸入の縮小、石炭サプライチェーンでの相対的な低在庫がその理由。また、欧州のエネルギー不足を背景に、国際相場が冬場を通じて現行水準(1トン=400米ドル強)で高止まりし、これが中国国内価格の押し上げ要因になるとみている。

 中国は石炭の国内生産量を増やしており、年内には自給可能なレベルに達するとみられるが、それでも国内価格は向こう2-3年をかけて、徐々に持続可能な水準に正常化する可能性が高い。

 BOCIは秦皇島港の一般炭平均スポット価格に関する2022年の予想値を10%引き上げて1トン=1,235元に設定。2023年、2024年についても20%、12%上方修正し、1,091元、916元とした。さらに石炭銘柄の利益見通しを11-95%増額修正し、うちエン鉱能源の株価の先行きに対する見方を中立から強気にアップグレードした。

 一方、強粘結炭(原料炭)価格は低調。山西省柳林産のスポット価格は鉄鋼セクターの採算悪化による需要減で、6月下旬-7月下旬に31%下落した。BOCIは冬の季節需要の弱さから、この先さらに下落するとの見方。また、新たな鉄道が開通したモンゴルから中国への石炭輸出が2021年の1,600万トンから5,000万トンに増える可能性があるとし、これも国内原料炭価格の押し下げ要因になると指摘している。現行価格の相対的な高さから、強粘結炭の平均スポット価格に関する2022-2024年の予想値を7%、3%、9%引き上げながらも、首鋼福山資源(00639)の株価の先行きに対する強気見通しを中立的にダウングレードした。

 石炭銘柄では中国中煤能源とエン鉱能源をトップピックとし、ほかに中国神華能源(01088)の株価の先行きに対しても強気見通しを付与した。セクター全体のレーティング面の潜在リスク要因としては、予想を超えて石炭需要が低迷する、あるいは国内生産量が増加する可能性を挙げている。