今日の為替ウォーキング
今日の一言
過去を思いだせぬ者は、過去を繰り返す運命にある
Can’t Hold Us
7月の米CPI(消費者物価指数)は、前年比で+8.5%と、6月の9.1%から伸びが鈍化した。市場予想の+8.7%も下回った。前月比は0.0%で 6月の+1.3%から大きく下がり、この2年間で初めて上昇が止まった。変動の大きい食品、エネルギーを除くコアCPIも市場予想より低い伸びにとどまった。
総合CPIが予想以上に下落した背景は、エネルギー価格が前月比約5.0%低下したことが理由だ。8月になってガソリンの平均小売価格はさらに10%近く下げ、ガロン当たり4ドルを下回っている。この実績は今回の統計に反映されることになるので、CPIは今後一段の低下が予想される。
「インフレのピークアウト」これこそ、FRBが長い間待ち望んでいたサインだ。この状況が継続するならば、FRBは利上げの手綱を緩めることができて、米経済は景気後退(リセッション)を回避してソフトランディングに成功する期待が高まる。雇用市場の失業率を悪化させることなく、インフレを制御するというシナリオが夢ではなくなってきた。
世界の主要経済圏では、所得から消費者物価上昇率を差し引いた「実質所得」がマイナスになっている。給料は変わらないのに物価が急上昇しているからだ。実質所得の落ち込みぶりは激しく、不況時にしかみられないような水準まで落ち込んでいる。
政府・中央銀行は成長かインフレ抑制かの政策ジレンマに悩んでいる。しかし、中央銀行はエネルギー価格上昇が生むインフレをコントロールすることはできない。日銀の中庭を掘っても石油は湧いてこない。したがって「需要を減らすこと」が唯一の選択肢となる。例えば自家用車の運転の自粛を求め公共交通機関の利用を促進させる、あるいは節電や工場の休業を要請するなどだ。しかし、実質所得がすでに不況レベルにあるときに、需要を減らしすぎるのは危険な戦略である。
エネルギー節約という意味では、WFH(在宅勤務)も効果がある。一般的な会社の仕事場は、平均すると1日約5時間しか使用されていないが、照明や冷暖房はそれよりもはるかに長時間使用されている。週に3日自宅で仕事をすることで、欧州では1日あたり50万バレルの石油を節約できるという。日本でも家庭のエアコン設定を28度にしろと言う前に、全日出社を強制する会社を指導するべきではないか。
消費者物価は、生活コストを正確に示していないのも事実だ。確かに中古車価格は劇的に値上がりしたが、中古車を購入した人は全体から見ればごくごく少数だ。先進国の何億人もの消費者はCPIが示すほどの物価高を感じていないはずだ。米国の住宅ローン支払者は借り換えによって出費を抑えているが、CPIでは、住宅所有に関する支出が2020年1月からほぼ7%上昇したと計算される。
つまり、CPIの上昇率が示すほどには、実際の消費力は悪化していないのだろう。もっとも、日本の場合は逆だ。岸田首相は日本の物価上昇率は海外よりも低いと強弁しているが、実質賃金も低いのだ。消費力は海外よりもむしろ低くなっている可能性がある。