今日の為替ウォーキング

今日の一言

経験とは、あなたに起こったことではない。起こったことに対してあなたのしたことである

Can’t Fight This Feeling

 米国でコロナウイルスワクチンの接種がまだ本格化する前、経済再開の見通しがまったく不透明な時期に、 FOMC(米連邦公開市場委員会)は、政策のフォワードガイダンスに関して重要な変更を行った。2020年12月のことだ。

 FOMCは、((最大雇用と物価安定に関する))金融政策の方向について、従来の「今後数カ月」といったような、期間を定めた定量的な指針から、「一段の著しい進展があるまで」という、数字では表わせない定性的な指針へと修正した。

 そして2022年6月のFOMCでは、フォワードガイダンスそのものを実質的に放棄してしまった。 FRBは、事前のガイダンスでは利上げ幅0.50%をマーケットのコンセンサスとして形成していながら、急遽0.75%の利上げに踏み切ったのだ。インフレの激しさがFOMCの想定をはるかに超えていたということだ。この時から、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策は、将来の経済動向を予測した「先出しスタイル」から、経済データの結果を見て判断する「後出しスタイル」へと変更になった。

 新型コロナは2020年3月と4月のたった2カ月間で、 2,156万人もの米国人の職を奪った。米雇用市場は、それを2年3ヵ月の月日をかけてのべ2,174万人増やし、今年の7月についに新型コロナ前の状態に戻すことに成功した。

 失業率は、新型コロナの感染が拡大した2020年4月には14.7%まで悪化したが、今は2019年9月に記録した過去最低水準の3.5%まで低下している。米雇用市場に関して言えば、新型コロナの影響は完全に消えたといってもよいだろう。

 米雇用市場が完全雇用状態まで復活したのだから、中央銀行が「コロナ戦時モード」である超低金利政策を続ける理由もなくなった。FRBは今年3月から7月までの利上げによって政策金利であるFF金利を0.00-0.25%から2.25-2.50%まで引き上げた。とはいえ、パウエルFRB議長が言うように、これはまだ水準としては「中立ゾーン」に戻っただけである。

 FRBは雇用安定」と「物価安定」というふたつの法的使命(マンデート)がある。完全雇用を達成したFRBは、雇用市場が好調なうちに、インフレを制御してもう一つの使命を達成しようと考えている。

 しかし、雇用市場の強弱の判断基準はどこにあるのだろうか。就業者の増加数が急減しても、平均賃金上昇率の高止まりが続くなら、利上げを強めるのか。その逆の場合はどうするのか。フォワードガイダンスが廃止された今、マーケットは手探り状態になっている。

今週の 注目経済指標

出所:楽天証券作成