【6】株主平等の原則に反すると見なされる優待は廃止される可能性がある。

 今後、自社製品でも自社サービスでもない優待品の提供は、「株主平等の原則に反する」とみなされて廃止されることもあります。特に、QUOカードのように、現金に近いものは要注意です。

 上場企業は、会社法の規定で「株主平等の原則」に従う義務を負っています。株主平等の原則とは、「自らの株主を、その保有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱わなければならない」とする原則です。

 ここで重要なのは、「保有する株式数に応じて」平等ということです。10人株主がいたとして、10人が1人ずつ平等に扱われるという意味ではありません。10人が保有する「100株当たり」の権利が平等でなければならないという意味です。

 普通株式を1,000株保有する株主は、100株保有する株主よりも10倍の経済メリットを受けなければなりません。配当金は実際そうなっています。1株当たりの配当金が200円ならば、100株保有する株主は2万円の配当金を受け取る権利が得られますが、1,000株保有していればその10倍の20万円を受け取る権利が得られます。

 ところが、株主優待制度はそうなっていません。株主優待制度は、小口投資家(主に個人株主家)に有利、大口投資家(主に機関投資家)に利益がない内容となっています。そのため、機関投資家には、株主優待制度に反対しているところが多数あります。

 オリックス(8591)は今年5月11日、株主優待制度を2024年3月までで廃止すると発表しました。今期(2023年3月期)末と来期(2024年3月期)末の株主は、株主優待を受ける権利が得られますが、それで最後となります。再来期(2025年3月期)以降は、株主優待は実施されません。

 オリックスは業績も財務も好調で、優待人気トップの座を長く維持してきました。なのに、なぜ優待を廃止するのでしょう? 同社は、「株主の皆様への公平な利益還元のあり方という観点から慎重に検討を重ねました結果、株主優待制度については廃止し、今後は配当等による利益還元に集約することといたしました」と説明しています。

 自社製品やサービスを優待品として贈呈する企業は、優待廃止になる可能性が相対的に低いと思います。優待を実施している多くの日本企業は株主を潜在顧客ととらえ、自社製品やサービスを優待品として提供しています。

 自社製品やサービスを知ってもらい販売促進につなげることも狙っています。販売促進に貢献すれば、全社の利益が拡大し全ての株主の利益につながるので問題ありません。

 優待を実施する企業に、小売りや食品、電鉄など消費・サービス産業が多く、自社製品やサービスを優待に提供する例が多いのは、そのためです。

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