【3】配当利回りも考えて、総合的に有利なものを選ぶ
日本の個人投資家には、配当金よりも贈り物(株主優待)を好む傾向があります。ただ、それも度が過ぎると、非合理な行動につながります。株主への利益還元は、本来は配当金支払いによって行うのが筋です。配当金と、株主優待を総合して、メリットの大きいところを選ぶべきです。
2,000円の自社商品(食べ物)を贈ってくれる会社を歓迎し、同じ投資金額で、5,000円の配当金(源泉税差し引き後では4,000円)を払ってくれる会社を避けるといった、非合理な行動をしていないか、考えてみてください。
株主優待の魅力的な銘柄と、優待はないが安定的に高い配当利回りの出ている銘柄に、分散投資した方がよいと思います。
【4】権利取り直前に株価が大きく上昇しているものは投資を避ける
魅力的な株主優待で有名な銘柄には、優待の権利取り直前に株価が急騰し、権利落ち後に株価が急落するものもあり、注意を要します。優待の権利取り前に、株価が急騰している銘柄は、投資を避けた方が良いと思います。
株主優待目当てで株式投資している人には、いい意味でも悪い意味でも、日々の株価変動をあまり見ない人が多いようです。ストレスを感じずに、じっくり長期投資できるのは、良いことです。安定成長の小売株や食品株に投資して、気づかないうちに、株価が倍以上に上昇していたということもあります。
ただし、株価を見ないことによる、困った面もあります。小型で人気の優待株は、権利取りの直前に株価が大きく上昇することがあります。そういう銘柄は、投資を避けた方が賢明です。
年2回(中間決算と本決算)に分けて優待を出す銘柄では極端な値動きは少ないですが、年1回(本決算のとき)だけ人気の優待を出す小型株では、権利取り前に株価が大きく上がることがあります。そういう銘柄は、権利取りの直後に株価が大きく下がる可能性があります。
【5】業績や財務が急激に悪化する銘柄や不祥事を起こして暴落する銘柄は「売り」
株主優待目当ての投資には、困った面もあります。優待の魅力に惹かれて投資する人の一部に、業績や財務、株価をまったく見ない人がいることです。
投資した後、業績・財務が急激に悪化する銘柄は、いったん売却すべきです。個人投資家に人気の優待株に、旅行業や外食業があります。一時的に業績が悪化しただけならば問題ないですが、構造不況に陥ってリストラを始めたり、財務が痛んでいる銘柄は売るべきです。
と言われても、「一時的に悪化しているのか構造的にダメになっているのか、どうやって判断したらいいか分からない」という方が多いかと思います。そういう方にオススメは、機械的な損切りルールです。以下のルールをしっかり守ると良い結果につながると思います。
<リスク管理のための損切りルール>
投資した銘柄の株価が、買い値より20%以上、下がったら売却
株価が買い値より20%以上、下がるということは、一時的ではなく何か構造的な問題を抱えている可能性もあります。20%の損切りルールを持っておけば、半値になるまで放っておくという問題を抱えないで済みます。
もちろん、20%下がったところが大底で、そこから反発する銘柄もあります。そういう銘柄は「売らなければ良かった」と、後悔する人もいるでしょう。
私はファンドマネージャー時代、損切りしてから株価が反発しても、後悔することはありませんでした。20%下がってそこから反発する銘柄よりも、20%下がってそこから下げが加速する銘柄の方が、はるかに多かったからです。
20%も下がる銘柄を買ってしまったということは、買う時点で、何か重大な判断ミスをしていた可能性が高いということです。いったん売却し、頭を冷やしてから、別の有望銘柄を見つけて投資した方が良い結果につながることが多いと言えます。
「優待目当ての投資は良くない」例として有名になったのは、2010年に破たんした日本航空(9201) です。破たん前の日本航空は、業績や財務に問題がありましたが、株主に対して、航空運賃が正規料金の半値になる株主優待券を配布していましたので、優待券が欲しくて投資している個人投資家が多数いました。
私は、日本航空の破たん時にファンドマネージャーをやっていましたが、当時の日本航空は実質債務超過であったことから、投資不可リストに入れており、投資することはありませんでした。「実質債務超過」とは、自己資本が実質マイナスということです。
当時、表面上、自己資本はプラスでしたが、開示されている財務諸表の注記事項をきちんと見れば、退職給付債務(年金)の積み立てに大きな不足があり、差し引きすると、実質債務超過であったことが分かっていました。
このような問題銘柄を買った場合でも、20%下がったら売り、を徹底していれば、損失を一定範囲に抑えることができます。