【第二条】任意後見契約を作れ

 80歳になったら是非やっておきたいのは、子供や年の離れた弟妹など信頼できる誰かを成年後見の後見人に指定する任意後見契約を作っておく事だ。理由は、将来、職業後見人を家庭裁判所に選任される法定後見を避ける為の予防だ。

 職業後見人がつくと、被後見人の財産活用が著しく不便になることがあり、また、職業後見人には「毎月」2万円〜8万円くらいの(財産額等に応じて家庭裁判所が報酬を決める)手数料支払いが発生し、原則として被後見人が亡くなるまで続くことになる。はっきり言って、サービスに見合わない高額な手数料であり、無駄な支出になる。

 本人の意思能力が健在なうちに、「将来必要があれば任意後見に移行して、○○××(氏名)を後見人とする」といった内容の移行型の任意後見契約を作っておくと、将来必要性が生じて後見人の選任を申し立てた時に、この契約が優先される。つまり、いきなり職業後見人が後見人に就くことはない。

 具体的には、息子なり娘なりを金融取引の代理人兼必要がある場合の将来の後見人と定めて、「財産管理等委任契約」と「任意後見契約」をまとめた契約書を作って、公証役場に行って契約を成立させておくといい。契約書の文面は、「財産管理等委任契約」と「任意後見契約」という単語で検索するとネット上にサンプルがあるし、公証人のアドバイスを受けて作ってもいい。手数料は数万円程度だ。

 筆者の家では、父の没後翌年に母が82歳の時に筆者の妹(母の娘)を後見人として上記の契約を作った。

 成年後見制度の専門家によると、高齢者が任意後見契約を作る年齢は83歳が最も多いそうだが、認知症の罹患の時期や進行スピードには大きな差がある。幸いにして元気に80歳を迎えられたら、元気なうちに対策を取っておこう。

 尚、「財産管理等委任契約」と「任意後見契約」を合体した契約書を作っても、息子や娘が親の代理で金融取引を実行する形のまま任意後見までは至らないケースが9割以上だという。身内が後見人になっても、家庭裁判所が監督人を付けるケースがあり、余計な手数料が発生するので、自宅不動産の売却等でどうしても後見人が必要なケース以外は、後見人を付けて欲しいと家庭裁判所に申し立てる必要はない1

1宮内康二「成年後見制度の落とし穴」(青志社)を参考とした。同書は、成年後見制度全般に詳しく、任意後見契約を作る上での注意点や費用なども説明されている。後見制度を利用する「前に」是非一読を勧める。

【第三条】金融機関との取引を整理せよ

 筆者は、講演会やセミナーなどで、「自分の資産運用も大切ですが、同等或いはそれ以上に親の金融口座の中身が問題な場合が多いので、是非、親の金融資産と金融機関との取引をチェックして下さい」と言う機会が増えている。

 もちろん、80歳を迎えた親自身が自ら金融機関との取引を整理する心構えを持つのはいいことだ。

 具体的には、取引する金融機関を必要最小限に絞るべく資産を引きまとめることと、金融機関に対して「もう営業勧誘は一切要らない」と意思表示することの2点が重要だ。

 筆者の家のケースでは、筆者の母と筆者が母の証券口座がある証券会社を一緒に訪ねて、母の担当者とその上司と面会して、「母は高齢なので、今後一切の営業勧誘は必要ないので、一切行わないで欲しい」という趣旨を伝えた。

「そこまでやるか」と思われる読者がいるかも知れないが、これは是非必要な手続きだったと思う。

 本当は、ネット証券に口座を開いて母の資産を移管できると、無用なセールスに晒されずに済むのだが、母が高齢で新規口座の開設に手間が掛かり、またパソコンの操作が得意でないため、これまで使っていた対面営業の証券会社と取引を継続することにした。

 ネットリテラシーの高い高齢者は、ネット証券に資産を移して、子供等と一緒に管理するような体制を作るのが一番安心だし、より適切な運用商品を選びやすい。