今日の為替ウォーキング

今日の一言

最後の木が切られたとき、最後の魚が釣られたとき、最後の川が毒されたとき、あなたは、お金を食べることができないということを悟るだろう – インドの諺

Danger Zone 

 1年前の2021年8月30日、アメリカ軍はアフガニスタンから完全撤退した。
2001年9月11日の同時多発テロをきっかけに始まった米国史上最長の戦争に終止符を打った米国大統領として、バイデン大統領の名前は永遠に記憶されるはずだった。

 ところが、バイデン大統領には、称賛どころか反対に世界から批判が集中した。撤退前の8月15日にイスラム主義組織タリバンによって首都カブールが陥落させられたり、米国に協力してきた現地人を見捨てたりの「立つ鳥跡を濁す」撤退が、1979年のイランアメリカ大使館人質事件に匹敵する屈辱的な外交の失敗として記憶されてしまったのだ。当時のカーター大統領は、その3カ月後の大統領選挙で共和党のレーガン氏に敗北している。

 この時期を選んでペロシ下院議長が台湾を訪問したのは、1年前のアフガン撤退の話題が蒸し返されないように、民主党の外交の汚名返上を狙ったものだろう。「アンチ中国」は、米国議会において超党派的だ。ペロシ訪台に反対すれば親中派と見られるから米共和党からも強い反対はできない。

 ペロシ氏に引き続いて、民主党のマーキー上院議員が率いる議員団が台湾を訪問した。映画「トップガン」に感化されたのかどうかはわからないが、飛行機のタラップを降りるときには頭の中でテーマミュージックがガンガン鳴っていたかもしれない。

 この地域において中国の軍事的挑発行動がさらに頻発することは確実だ。ただ、中国が一線を踏み越えることはないとの分析も多い。それよりも中国政府は、米国を強く批判することで国内の不満を外に向ける機会として利用しようと考えている。中国経済は、GDPの30%を支えてきた不動産ビジネスが壊滅状態で、若年層の失業率は40%に上るといわれる。国内の不満を外に逸らすと同時に現体制の強化を図ろうとするのは政治の常套手段だ。

 ペロシ訪台が、この地域で第2のウクライナ戦争を引き押さない限りFXマーケットの影響は少ないままだろう。しかし、米中対立が世界の経済に及ぼす影響は今後さらに深刻になるおそれがある。

 中国経済は、世界のサプライチェーンの終点に位置する。世界経済にとっては始点に位置しているロシアよりはるかに重要である。世界経済は、米国につくか、それとも中国につくかの二択しかない。いずれにしても一番ワリを食ったのは、地政学リスクに巻き込まれる日本だ。

今週の 注目経済指標

出所:楽天証券作成