アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2022年7月29日時点。
※配当利回りは予想、単位は%。時価総額の単位は億円。月間騰落率の単位は%。移動平均線乖離率の単位は%、基準は13週移動平均線。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。7月29日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。

 配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

ランク外となった銘柄、新規にランクインした銘柄

 7月(7月5日終値から7月29日終値まで)の日経平均株価は5.2%の上昇となりました。

 中旬にかけて節目の2万7,000円を一気に突破して、7月28日には一時、6月10日以来の2万8,000円台を回復しました。米国のインフレ、金利上昇にピークアウト感が強まる形となり、グロース株主導で上昇基調が強まる状況となりました。

 7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では市場の想定通りに0.75%の利上げが実施されましたが、今後の引き締め緩和期待が強まる格好ともなったため、その後長期金利は低下しています。また、警戒された米国主要企業の決算が大きな波乱なく通過したことも安心感につながったようです。

 こうした中でランキング上位銘柄の株価も総じて堅調な推移となりました。とりわけ、商船三井(9104)日本郵船(9101)の株価が大きく上昇しました。

 これは、7月21日に海運大手3社がそろって業績の上方修正を発表したためです。日本郵船は通期の経常利益予想を従来の7,600億円から1兆400億円に、商船三井は5,250億円から7,100億円にそれぞれ引き上げました。コンテナ船事業を手掛ける持分法適用会社の収益上振れが主因となります。

 また、商船三井は7月29日の第1四半期決算発表で、年間配当金を350円から500円に引き上げることも発表しています。半面、長期金利の低下基調を受けて、三井住友FG(8316)などの金融関連株、資源価格の上昇ピークアウト観測で丸紅(8002)住友商事(8053)などの総合商社株は上値が重い展開でした。

 今回は、日東工業(6651)日本郵政(6178)が新規にランクインした一方、川崎汽船(9107)JFEHD(5411)が除外となりました。日東工業は株価の上昇ピッチが強まったことで、時価総額1,000億円超の基準に達しています。

 同社では2023年3月期と2024年3月期の配当性向を100%目標にすると配当方針を変更しており、2023年3月期は前期比127円増となる年間177円配当を計画しています。日本郵政は金利低下による金融関連株軟化の中で株価が下落したことで、配当利回りが上昇しました。

 一方、川崎汽船は他の海運大手2社と同様に業績上方修正を発表したことで株価が大幅高となり、配当利回りが低下しています。JFEHDはコンセンサスレーティングが低下したことでランキング基準未達となっています。

 みずほ証券では大手鉄鋼各社(日本製鉄も含む)の投資判断を一斉に売り推奨に格下げ、2023年に向けて世界鋼材需給の悪化が本格化する見通しとしています。

 アナリストコンセンサスと会社計画で配当予想が異なっているものとして、まずは海運株が挙げられます。商船三井(9104)は直近で上昇しているので、今後コンセンサスは切り上がるとみられます。逆に日本郵船(9101)は、上方修正後を反映した増配は今後発表されるとみられるので、会社計画を上回るコンセンサスは妥当でしょう。

 乖離が大きいのが住友金属鉱山(5713)で、コンセンサスが会社計画(4.15%)を大きく上回っています。日東工業(6651)も会社予想ベースの配当利回り6.84%と比較してコンセンサス水準が高くなっています。双日(2768)、住友商事(8053)、丸紅(8002)などの総合商社株もそろって、アナリストコンセンサスは会社計画を上回る配当予想となっています。

 半面、日鉄物産(9810)は会社計画の方が配当水準は高いため、実質的に利回りは表の水準を上回るとみられます。日本製鉄(5401)SBIHD(8473)は、会社側で2023年3月期の配当計画を示していません。アナリストの配当予想は、日本製鉄は127円(前期160円)、SBIHDは163円(前期150円)程度という状況です。

相場の注意点

 現在、4-6月期の決算発表が佳境を迎えていますが、比較的銘柄によって明暗が分かれる形となっています。7-9月期以降は、原材料費上昇の影響や部品不足問題などはピークアウトしてきそうですが、世界的な景気減速に対する懸念は一部の業界で強まりそうです。

 海運や鉄鋼、総合商社など、高配当利回り銘柄が多く属する業界は、当面業績のピークアウト懸念に株価の上値が抑えられる状況が見込まれます。金利のピークアウトは金融関連に逆風となり、全般的に高配当利回り銘柄は劣勢局面に入る可能性がありそうです。ただ、株価の押し目は、高配当利回り銘柄を長期の観点で投資する良いタイミングにはなるでしょう。