今日の為替ウォーキング
今日の一言
相場は頭がいい人が勝つわけではない。トレーダーには、天才性よりも、長い年月と失敗が必要なのだ
Stairway To Heaven
「インフレ」か「景気」か? それが問題だ
FOMCは、6月の会合において、 0.75%の利上げを決定した。事前のフォワードガイダンス(政策方針)では0.50%と通知していたにもかかわらず、土壇場になって利上げ幅を引き上げた。マーケットとの対話を重視してきたFRBにとっては異例中の異例だ。
しかし、そんなFRBの努力にもかかわらず、米国のインフレ上昇は止まらない。6月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比9.1%上昇と市場の予想以上に伸びが加速した。総合CPIの前年同月比の伸びが市場予想を上回るのは4カ月連続で、月間の上昇率は過去40年で2番目の大きさとなった。
短期金融市場では、FOMC7月会合で最大「1.00%利上げ」を織り込む動きが急速に強まっている。しかし、この激しいインフレが収まる前に、米経済の方が金利高に耐えきれなくなって自滅してしまうのではないかという懸念が、FRBの内部からも出始めるようになった。マーケットがインフレよりも景気後退を気にするようになったのはこの辺りからだ。
「景気後退」がグーグルの検索ワード1位になり、米国人の70%が「すでに景気後退か、年末までに景気後退になる」と悲観的になっている。米消費者信頼感指数は大幅に悪化し、FRBが重要視しているPCE(個人消費支出)コアデフレーターも伸び悩んでいる。米住宅市場では、購入キャンセル率が新型コロナ以降最大の落ち込みになった。
最悪なのは、FRBの対インフレ強硬姿勢がマックスに達した時に、米国の景気に腰折れサインが現れたことだ。FRBは「インフレは一過性にすぎない」という考えを持っていて、ずっと利上げに慎重だった。ようやく3月から利上げを開始したのだが、その時にインフレは遥か先を走っていた。
利上げの影響はタイムラグがある。7月にFOMCが1.00%の利上げを実施して、その効果が経済に表れるのは約1年後といわれる。ところが、1年後の米消費者物価指数は、すでに1.00%台に下がっている可能性がある。しかし、今更もう後戻りできない。パウエルFRB議長は「インフレ退治のために無条件でコミットする」と述べている。つまり、リセッションになってもやむを得ないと覚悟を決めているのだ。