今日の為替ウォーキング
今日の一言
私はよく態度がでかいと言われるけどそうかもしれない。でもそうすべきなのよ、他の誰でもない、自分で自分を信じなければいけないの、それこそが勝者を作るの。 - ビーナス・ウィリアムズ
Rapture
米労働省が発表した5月のCPIは前年同月比8.6%上昇し、40年5ヵ月ぶりの水準まで上昇。伸び率も過去30年で4番目の大きさとなった。
変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数も、6.0%上昇と、前月(6.2%上昇)からは伸びが鈍化したものの、市場予想の5.9%上昇を上回った。
ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギーや食品の値上がりに加え、新型コロナウイルスの流行一服を受けた航空運賃の上昇などがCPIを押し上げた。人手不足による賃金上昇も物価高の要因となり、FRBは7月の会合で、6月に続き0.75%の大幅利上げに動くとの観測が拡大している。
インフレ率は9%を超えてなお上昇するとの予想も広がるなか、リスクオンを支えていた米インフレ一服の期待は雲散霧消し、かわりにFRB(米連邦準備制度理事会)の大幅利上げに対する警戒感が急上昇してした。
世界の主要経済圏では、所得から消費者物価上昇率を差し引いた「実質所得」がマイナスになっている。給料は変わらないのに物価が急上昇しているからだ。実質所得の落ち込みは激しく、不況時にしかみられないような水準まで落ち込んでいる。
政府・中央銀行は成長支援かインフレ抑制かの政策ジレンマに悩んでいる。中央銀行はエネルギー価格上昇が生むインフレをコントロールすることはできない。日銀の中庭を掘っても石油は湧いてこないのだ。したがって「需要を減らすこと」が唯一の選択肢となる。例えば自家用車の運転の自粛を求め公共交通機関の利用を促進させる、あるいは節電や工場の休業を要請するなどだ。しかし、実質所得がすでに不況レベルにあるときに、需要を減らしすぎるのは危険な戦略である。
エネルギー節約という意味では、WFH(在宅勤務)も効果がある。一般的な会社の仕事場は、平均すると1日約5時間しか使用されていないが、照明や冷暖房はそれよりもはるかに長時間使用されている。週に3日自宅で仕事をすることで、欧州では1日あたり50万バレルの石油を節約できるという。日本でも家庭のエアコン設定を28度にしろと言う前に、全日出社を強制する会社を指導してほしいものだ。
消費者物価は、生活コストを正確に示していないのも事実だ。確かに中古車価格は劇的に値上がりしたが、身近で最近中古車を買った人が何人いるだろうか。中古車を購入した人は先進国消費者全体から見ればごくごく少数だから、ほとんどの人は消費者物価の上昇率が示すほどの物価高を感じていないはずだ。米国の住宅ローン支払者は借り換えによって出費を抑えているが、CPIでは、住宅所有に関する支出が2020年1月からほぼ7%上昇したと計算される。
つまり、CPIの上昇率が示すほどには、実際の消費力は悪化していないのだろう。もっとも、日本の場合は逆だ。岸田首相は日本の物価上昇率は海外よりも低いと強弁しているが、実質賃金も低いのだ。消費力は海外よりもむしろ低くなっている可能性がある。