アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2022年7月5日時点。
※配当利回りは予想、単位は%。時価総額の単位は億円。月間騰落率の単位は%。移動平均線乖離率の単位は%、基準は13週移動平均線。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。7月5日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。

 配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

ランク外となった銘柄、新規にランクインした銘柄

 6月(6月3日終値から7月5日終値まで)の日経平均株価は4.8%の下落となりました。

 為替相場のドル高円安を好感して、9日には3月の戻り高値水準を更新しましたが、その後は、ECB(欧州中央銀行)のタカ派姿勢やFOMC(米連邦公開市場委員会)の利上げ幅0.75%への拡大、スイス国立銀行の予想外の利上げ実施など、世界的な量的金融引き締め(QT)強化の動きが警戒視され大きく値を下げました。

 20日には3月16日以来の安値水準となっています。足元では、世界的な景気減速懸念が強まる一方、インフレピークアウトへの期待も高まり、やや落ち着いた動きとなってきています。

 こうした中でランキング上位銘柄の株価も総じて軟調な推移をたどる状況となっています。とりわけ、商船三井(9104)日本郵船(9101)川崎汽船(9107)など海運株の下げが大きくなったほか、住友金属鉱山(5713)日本製鉄(5401)など、素材株の下げも目立ちました。

 海運株は、世界的な景気減速懸念の強まりを背景に、バリューからグロースへの資金シフトの流れにも押されたようです。非鉄金属や鉄鋼株なども、景気減速への懸念が意識されたほか、原油相場の下落などもマイナス材料となったようです。

 半面、ソフトバンク(9434)はディフェンシブセクターへの資金シフトが追い風、三井住友FG(8316)は米国金利上昇局面で買い優勢となり、プラス圏を確保しています。SBIHD(8473)は三井住友FGの出資報道が伝わりました。

 今回は、川崎汽船(9107)、住友金属鉱山(5713)、丸紅(8002)が新規にランクインした一方、日本郵政(6178)H.U.グループ(4544)兼松(8020)が除外となりました。川崎汽船は株価急落による利回り水準上昇のほか、みずほ証券やJPモルガン証券などが格上げしたことで、コンセンサスレーティングがランキング基準に該当することになりました。

 住友金属鉱山や丸紅は資源関連株安の流れの中、相対的な株価下落幅が大きかったことで、利回りランキングが上昇した格好です。日本郵政、H.U.グループ、兼松はそろって、期間中に株価が上昇したことで利回り水準が低下し、ランキング外となりました。

 アナリストコンセンサスと会社計画で配当予想が異なっているものとして、まずは海運株が挙げられます。会社側の配当計画を前提にすると、商船三井(9104)の配当利回りは11.63%、日本郵船(9101)は11.61%、川崎汽船(9107)は3.90%となります。

 それぞれ会社側計画の増配が想定されていますが、とりわけ川崎汽船は乖離が大きく、アナリストコンセンサスでは年間配当金490円程度が予想されています(会社計画は300円)。双日(2768)住友商事(8053)、丸紅(8002)などの総合商社株もそろって、アナリストコンセンサスは会社計画を上回る配当予想となっています。

 半面、日鉄物産(9810)は会社計画の方が配当水準は高いため、実質的に利回りは表の水準を上回るとみられます。JFEHD(5411)、日本製鉄(5401)、SBIHD(8473)は、会社側で2023年3月期の配当計画を示していません。アナリストの配当予想はJFEHDが101円(前期140円)、日本製鉄は126円(前期160円)、SBIHDは161円(前期150円)程度という状況です。

相場の注意点

 足元で発表された米国のインフレ指標では、米ミシガン大学が発表した期待インフレ率の確報値が速報値を下振れたのに続き、PCEデフレーターも市場予想を下振れとなっています。インフレのピークアウトを意識させる状況となっており、米10年債利回りも一時の3.5%前後から2.8%を割り込む水準にまで低下してきています。

 さすがに、株価の調整が大きかったグロース株のリバウンドに市場の関心は向かうことが考えられます。目先は、バリューからグロース株への資金シフトが強まるとみられ、また、高配当利回り銘柄は海運や鉄鋼、非鉄金属など景気敏感株が多いことで、世界的な景気減速懸念も逆風となります。

 7月からスタートする第1四半期決算での増配の動きなどは期待しにくく、しばらくは相対的に高利回り銘柄は伸び悩む可能性が高くなりそうです。ただ、5%を超える配当利回り水準には魅力が強く、株価が一段安となり、さらに利回り水準が上昇する場面は、格好の長期投資のタイミングともなってくるでしょう。