今日の為替ウォーキング
今日の一言
人生を愛するなら時間を無駄にするな。人生は時間で出来ているんだ - ブルース・リー
There Must Be an Angel
イエレン米財務長官は、米国のインフレを「一過性」と評価していたのは「間違い」だったことを認めた。FRB(米連邦準備制度理事会)に対しては「利上げが半年遅かった」と批判されている。FRBに限らず、世界の中央銀行は物価のコントロールを失い、インフレ期待の不安定化を防ぐために、利上げの大幅前倒しの傾向を強めている。
ECBは、政策金利(主要金利)は0.00%、貸付金利(上限金利)を0.25%、そしてデポ金利(下限金利)を▲0.5%に設定している。ECBは、量的緩和政策であるAPP(債券購入プログラム)を第3四半期に終了した後、利上げを行うとのフォワードガイダンスを発表していたが、今や7月の利上げは確実といわれている。利上げ時期が約半年も前倒しになった。しかも、0.5ポイント一気に利上げして、ゼロ金利を終了する可能性もある。
ECBが利上げを急ぐ背景は、過去最悪の高インフレだ。ウクライナ戦争の長期化で、欧州のエネルギー危機は深刻化している。ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプラインであるノードストリームが今月閉鎖され、ドイツへの天然ガス供給が完全にストップするおそれがある。さらに悪いことに、ノルウェーの石油ガス労働者が大規模にスト突入し、欧州向け天然ガス輸出量が60%カットされる。
ドイツのガス料金は3倍に跳ね上がり、今年の冬は「配給制」になるとさえいわれている。欧州のインフレがさらに上昇するのは避けらない状況で、ECBの利上げは避けられない。
しかし、急速な利上げは、経済的に脆弱な周辺国(イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ)をさらに追いつめることになる。そこで、ECBは「分断化防止策」の導入を検討している。分断化防止策とは、ユーロ圏内の国債利回りの格差拡大が引き起こすユーロ圏市場の分断を防ぐ措置のこと。しかし、これに対してドイツが批判的立場を取っているため、成立できるか不明だ。
経済的にも金融政策にも混迷さを増すなかで、ユーロのパリティ割れの可能性が高まっている。米国にもリセッション懸念が高まっているが、それでもドルを売ってまでユーロを買うほど強いインセンティブがないということだ。