今日の為替ウォーキング
今日の一言
いいアイデアなら、とにかくやってしまうこと。許可を得るより謝る方がずっと簡単だ
I Want To Break Free
中央銀行の相次ぐ利上げでも各国のインフレ率が低下する兆候は見えない。それにもかかわらず、新型コロナによる移動制限の反動から、欧州では夏休み旅行の予約が過熱している。米国では今週末は独立記念日で三連休となるなか、本格的なドライブシーズンを迎え、ガソリン価格が上昇。NY原油先物価格は1カ月ぶりの高値をつけた。
中央銀行は過去数十年間、エネルギー価格の上昇は家計の可処分所得の減少であると捉えてきた。エネルギー価格の急上昇は消費行動を縮小させるが、その結果、インフレ期待は暴走することなく、安定的に維持されてきたのだ。
しかし、インフレがエネルギー価格にとどまらず、広範な商品に及ぶ現在の状況においては、インフレ期待は逆に不安定になり、1973年に日本を襲ったような、オイルショックによる「狂乱物価」が発生するおそれがある。
この状況で先進国の中央銀行は「景気刺激・経済成長」か「インフレ退治」のどちらを優先するべきかで悩んでいる。
FRB(米連邦準備制度理事会)は、経済成長を犠牲にしてもインフレ退治を徹底する考えだ。6月14-15日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、0.5%の引上げ幅ではなく、94年11月以来となる0.75%の大幅利上げを決定した。次回7月の会合でも0.75%の利上げを実施し、年末のFF着地レートを3.25%から3.5%まで引き上げる考えだ。
ECB(欧州中央銀行)は、7月と9月の利上げが確定的となっている。現在の予想では0.25%ずつの利上げというのが、現在の中心予想だが、インフレの状況によっては、9月が0.50%になる可能性も否定できない。
SNB(スイス国立銀行)は6月会合で、政策金利据え置きの予想のなかで、0.50%の大幅利上げを断行した。SNBは年内にマイナス金利を終了する考えだ。SNB総裁は国内インフレ悪化を防止するために、スイス買いの為替介入も行う考えがあると表明した。BOE(イングランド銀行)も今月利上げした。
日銀の悩みは、他の中央銀行と真逆で、インフレを「いかにして上げるか」だ。大規模緩和を続け円安を放置することで、日銀はついにインフレ目標を達成することになるが、その代償として経済成長は犠牲にされるだろう。「家計は値上げを受け入れている」という発言は、喜びのあまり思わずもらしてしまった黒田日銀の勝利宣言かもしれない。
では日本の経済成長は何を頼りにするのか?それは、「新型コロナ前のインバウンド景気よ。もう一度」である。海外観光客を呼ぶには、いっそ150円くらいまで円安になってくれた方がいいと政府は願っているではないだろうか。
しかし、インフレを抑制しようと世界の主要中央銀行が利上げを急ぐ中で、あえて国内インフレを煽る政策をとる日銀の政策は、遠からず限界を迎えるというのがマーケットの見方だ。日銀が金融引き締めをぎりぎりまで先延ばしした結果、何が起きるか。より急峻かつより大幅な利上げである。インフレは一過性として利上げを見送ってきたFRBは、今では0.5%の利上げではインフレに追いつかなくなってしまった。