都市封鎖の解除で最悪期を脱却、インフラ建設の強化や不動産緩和が追い風に

 中国のセメント・セクターは4-5月の極端な需要の低迷で、在庫の増大や価格の下落に見舞われたが、BOCIは上海市のロックダウンの解除を受け、今後の需要の回復を見込んでいる。2022年下期にはセメント生産量が増加に転じ、価格の回復や収益性の改善が期待できるとの見方。これまでの下落を受けたセメント銘柄の低バリュエーションが投資の好機を意味するとみて、セクター全体の先行きに強気見通しを継続している。

 中国のセメント需要は大規模な都市封鎖や豪雨の影響で急減し、需要の指標となる全国のセメント生産量は5月に前年同月比17%減。1-5月の累計でも前年同期比15.3%の落ち込みとなった。ただ、BOCIはこの先の回復を予想し、その理由として、まずは中国政府の新型コロナ対策の調整を挙げている。経済活動の混乱を避けるため、政府はPCR検査を「常態化」させることで感染を抑え込む方針であり、大規模な都市封鎖の可能性が後退したという。また、財政部は地方特別債(SPLB:インフラ投資目的)の増発枠3兆6,500億元の起債を2022年6月末までに基本的に完了し、8月末までには投資を実行するよう地方当局に要請しており、インフラ建設部門のセメント需要は向こう2-3カ月で大きく復調する見通しとなった。

 地方政府が相次いで、不動産引き締めの緩和に動いていることも、セメント需要の押し上げに寄与する見込み(住宅ローン金利引き下げや頭金規定の緩和など)。5月には不動産販売面積と新築住宅着工面積の減少率が縮小し、前月比では大幅な伸びに転じた。

 BOCIは需要の持ち直しとベース効果で、国内のセメント生産量が7-9月にプラス成長を回復し、11-12月には2桁増に加速するとみている。通年のセメント生産量は前年比5%の小幅減に踏みとどまるとの見方だ。また、セメント価格は多くの地域で、8月から上向きに転じると予想。一般炭価格の下落効果もあり、下期の1トン当たり平均粗利益は、上期を11元ほど上回ると予想している。最近では一部地域でセメント価格が急落しているが、これは在庫処分によるもので、短期的に収束する見通しという。

 これまでの想定外の需要減と価格の下落を反映させる形で、BOCIはカバー銘柄3社の2022-2024年の利益見通しをそれぞれ18-29%、9-19%、8-16%減額修正した。3銘柄のうち、引き下げ幅が最も大きいのは華潤セメント(01313)。同社に関しては市場シェアの低下や本拠地・広東省一帯の雨季入りなどを理由に、従来の強気見通しを中立的に変更した。安徽コンチセメント(00914)と中国建材(03323)の株価の先行きに対しては、いずれも強気見通しを据え置いている。中でも、事業構成と地理的配置の両面で多様性が高い中国建材の業績が2022年も底堅く推移すると予想。セメント事業の再構築による効果に加え、セメントプラント管理サービスが成長エンジンに育ったと指摘。新素材事業に関してもグリーンエネルギー開発に絡み、将来性を高く評価している。