今日の為替ウォーキング

今日の一言

 どんな計画にも理論がなければならない。理論と思想に基づかないプランや作戦は、ヒステリー声と同じく、多少の空気の振動以外には、具体的な効果を与えることはできない。

Hush

 新型コロナ感染という、2年間世界を苦しめた悪夢がようやく終わりに近づき、今年は明るい年になると期待したのは束の間で、ロシアのウクライナ侵攻によって、世界はさらに暗い方向へと進んでいる。「新型コロナの時代は、まだよかった」と懐かしむ日が来るかもしれない。

 ロシアが天然ガスや原油などの天然資源を「武器化」したことで、 エネルギー安全保障が、これまでにないほど世界経済にとって重要な意味を持つようになった。

 エネルギー供給の多くをロシアに依存する欧州は、ロシアの設定した価格や条件に従う「価格追随者」的立場である限り、ロシアに対する制裁効果は限定的である。

 ロシア国営ガス大手ガスプロムは、ドイツと結ぶ海底パイプライン「ノルド・ストリーム」経由の欧州向けガス供給量を年内に完全停止すると通告した。ドイツ、オランダは、気候変動対策をいったんあきらめ、石炭火力発電の利用を増やす方針を決定。それでも、冬場のエネルギーは不足が予想され、「配給制」になるといわれている。

 一方、今年の夏は平年以上に猛暑になるといわれる日本では、電力供給が絶対的に不足することは確実になっている。日本政府はエネルギー対策を発表したが、その内容は「エアコンの設定温度を28度に上げて、照明を暗くした部屋で、テレビは集まって見る」。節電に努めると月数十円のポイントをもらえてお得というのが、政府の支援策だ。新型コロナの去年の夏とどちらがマシだろうか。

 日本は世界最大のLNG(液化天然ガス)輸入国である。ロシアからの輸入比率は低いので、幸い欧州のような問題にすぐに直面することはないが、エネルギー価格の世界的な高騰は日本経済にダメージを与える。大規模停電の頻発で生産がストップすることになれば、日本の製造業にとって大きなリスクだ。

 中央銀行は過去数十年間、エネルギー価格の上昇は家計の可処分所得の減少であると捉えてきた。エネルギー価格の急上昇は消費行動を縮小させるが、その結果、インフレ期待は暴走することなく、安定的に維持されてきたのだ。

 しかし、インフレがエネルギー価格にとどまらず、広範な商品に及ぶ現在の状況においては、インフレ期待は逆に不安定になり、1973年に日本を襲ったような、オイルショックによる「狂乱物価」が発生するおそれがあるだろう。

今週の注目経済指標

出所:楽天証券作成