※本記事は2018年7月10日に初回公開したものです。

下落相場で個人投資家が考えるべき8カ条

≫8カ条1)~4)は前編:下落相場に負けない個人投資家になるための8つの法則をご覧ください。

5)「情報は株価に反映しているはずだ」と考える

 株価下落の背景には、たいてい「悪材料」がある。

 この材料が主に株価のリターンを決めるのだと考えた場合、投資家が株式を売ることが有利に働くのは、悪材料が株価に「まだ十分反映していない」場合と、この「悪材料」が市場の参加者が考えているよりも「もっと悪くなる」ことが確実だと考えられる場合だ。

 しかし、悪材料の株価への織り込みが「不足なのか」「行き過ぎなのか」を判断することは、市場参加者の誰にとっても簡単ではない。投資家である、あなた自身にとってもそうだろう。

 また、悪材料について、現在市場参加者が予想するものよりも、将来さらに悪化するか否かを判断することも大変難しい。

 結局、市場の参加者よりも情報と判断の上で優位に立てるという確度の高い根拠があるのでなければ、「悪材料は、不足か過剰かは分からないが、おおむね現在の株価に反映している」と考えて、これまでもそうしてきたように、現在の株価で株式を保有してリスク・プレミアムの獲得を目指すことが「現実的な情報の制約を考えた場合の最適な戦略」となることが理解されよう。

6)「下げ相場にはアクティブ」という言葉に惑わされない

 株価が上昇し続けている時には、「一本調子の上昇相場はインデックス・ファンドを持っていればいい」と言い、株価が下落すると「下落相場(ボックス相場)では、投資銘柄を選別するアクティブ・ファンドが有利だ」と言うのは、二昔くらい前の証券会社のセールスマンによくあったことだが、こうした言葉を真に受けて、下落相場を見てからインデックス・ファンドをアクティブ・ファンドに入れ替えるのはやめた方がいい。

 下落相場でアクティブ・ファンドが有利という話は、半分嘘で、半分本当だ。

 嘘の方から説明すると、市場全体では、アクティブ運用の平均がインデックス運用(時価総額加重タイプの指数の場合)で、インデックス・ファンドの方が、商品としてのファンドの手数料も、ファンド内で掛かる売買手数料も安いのだから、上昇相場・下落相場には無関係にインデックス・ファンドが有利なのだ。

 付け加えると、相対的にパフォーマンスの良いアクティブ・ファンドを「事前に」見分けることは誰にとっても困難である。つまり、平均的に劣って、しかも相対的に良いものを選べないのだから、アクティブ・ファンドに投資することは合理的ではないというのが、原則的な理屈だ。

 さて、別の側面を説明しよう。現実のアクティブ・ファンドは、まず、インデックス・ファンドよりもキャッシュポジションが大きいし、バリュー株(割安株)に投資するものや最小分散ポートフォリオ型の運用(リスクの最小化でポートフォリオを作る)をするものは、インデックス・ファンドよりもβ値(市場全体の変動に対する感応度)が小さいので、下落相場では、インデックス・ファンドよりもマイナスが小さい傾向がある。

 だから、「インデックス・ファンドよりも下落相場に強いアクティブ・ファンド」を持つことは可能なのだ。ただ一方で気をつけたいことは、そうしたファンドが長期的に保有した場合にインデックス・ファンドよりも有利だと言える根拠がないことと、もう一つは、「ここまで」が下落相場でも、「これから」が下落相場であるか否かについて投資家は判断ができないのだから、結局、下落相場に強いことを理由にアクティブ・ファンドを買える理由はないことになる。