OPEC増産報道で急騰した原油と石油株
以下のとおり、6月2日夜(日本時間)のOPEC(石油輸出国機構)・非OPEC閣僚会議が行われた時間帯に、原油相場は大きく上昇しました(およそ2時間で4%以上も上昇)。
主要メディアを通じて伝え漏れてきたのは「増産決定」でした。「OPECが増産を決めれば原油価格は下がる」という常識は、もはや過去の遺物となってしまったのでしょうか。
図:NY原油先物(期近 15分足) 単位:ドル/バレル
原油相場が急騰した6月2日から3日にかけて、米国の石油株の代表格であるエクソンモービルは1.5%、シェブロン0.9%、オクシデンタル・ペトロリアムは1.4%。国内株式市場ではINPEX(1605)が2.5%、出光興産が1.3%、上昇しました。
消費国とOPECの思惑は食い違っている
3日、複数の主要メディアは、「なぜOPEC増産で原油相場が急騰したのか?」という問いへの答えを、「西側の制裁によりロシア産原油の流通量が急減して引き締まる世界の需給バランスを緩ませるには、今回決定した増産量では不十分であるため」と述べました。
また、「昨年夏以降、一向に聞き入れてくれなかった増産要請を、OPECプラスはようやく受け入れてくれた」「OPECプラスは、消費国への配慮を強めるよう、方針を変えてくれた」とも、報じられました(原油相場が下落していなくても、方針転換だけで歓迎された)。
こうした釈然としない状態を説明するには、そもそも消費国とOPECプラスの「増産決定」に対する認識が全く異なることに着目する必要があります。
図:「増産決定」の認識の違いと原油急騰の背景
高インフレ状態から早く脱したい消費国は「OPECプラス増産決定」の見出しを歓迎しました。この「歓迎ムード」は、消費国側の売り圧力を弱め、原油相場が急騰することを許す、直接的な要因となったと筆者はみています。
一方、OPECプラスですが、「増枠分の一部は前借り」「生産量増加の保証なし」「ロシアに不利な行動はしない」という、会合での決定事項などから推測される3点を考慮すれば、今回の決定は、場当たり的で、実現できない自覚がある可能性があることが浮かび上がります。