物価よりも景気後退リスク

 マーケットの焦点は物価から景気後退リスクに転じつつあります。米株は8週連続の後、今週に入ってさすがに反発していますが、ベアマーケット入りのリスクが消えたわけではなさそうです。

 今後は、企業決算や経済指標などの実態の数字チェックをし、本当に景気が後退するのかどうかを確認しながら次の方向を探っていくことになりそうです。

 18日のNYダウは1,164ドル安となりました。下げ幅は2020年6月以来、約2年ぶりの大きさとなりました。

 大幅下落の引き金になったのは、米小売大手ターゲット(TGT)の急落です。同社が18日に発表した2-4月期決算で、燃料費の高騰などを受けて輸送コストが上昇し、最終利益が半減となったことで株価は約27%急落しました。

 1日としては1987年のブラックマンデー以来の大幅な下げとのことです。

 前日17日には、米小売大手ウォルマート(WMT)が2-4月期決算を発表しました。やはり、燃料価格高騰や人件費拡大などコスト増が収益を圧迫し、25%の減益となりました。この決算を受けて株価は約11%下落しました。

 17日には4月の米小売売上高も発表されています。小売売上高は+0.9%と4カ月連続の増加で、高インフレにもかかわらず消費の堅調さを示した数字となりました。インフレによる家計への圧迫がまだ消費に大きく影響していないようですが、一方で、ターゲットやウォルマートの決算が示しているように企業はインフレによるコスト増に耐え切れなくなってきているようです。

 両社の決算は、いずれ個人の家計も耐え切れなくなってくるのではないかと連想させるのに十分な内容です。

 インフレ撲滅に突き進んできたFRBが、8週連続の株価下落や景気後退を示す経済指標を意識して、タカ派姿勢をトーンダウンする兆候が見えてくるかどうかに注目です。

 25日には、前回5月のFOMC議事要旨が発表されますが、タカ派色満載の内容と今後の理事たちの発言内容の違いが鮮明になってくれば、ドル/円の重い状況はしばらく続くかもしれません。

 一方、日本のCPIは、携帯電話通信料値下げ要因の剥落傾向が10月まで続くことが予想され、今後も2%前後で高止まりしていきそうです。日本銀行はすぐには方針を変更するとは思えませんが、国債市場や為替市場で思惑が高まり、催促相場が起こることは予想されます。

 ドル/円は、一時のような一本調子の円安相場ではなくなり、135円を目指す勢いはなくなったようです。当面は125~130円のレンジの中で居心地のよい場所を探す展開になりそうです。125~130円の半値である127.50円がひとつの目安の水準になるかもしれません。