1932年以来、90年ぶりの連続下落記録

 先週のダウ工業株30種平均は、週間で934ドル安(▲2.9%)となり、8週連続の下落となりました。8週連続は、金融情報会社リフィニティブによると、世界恐慌のさなかにあった1932年以来90年ぶりの連続下落記録とのことです。

 40年ぶりのインフレを抑えるために、FRB(米連邦準備制度理事会)が22年ぶりの0.50%の利上げと前回の倍速ペースで資産を圧縮する方針を発表したことが、90年ぶりの株連続下落を引き起こしたようです。

 バンク・オブ・アメリカが17日に公表した5月の機関投資家調査(6~12日実施)によると、運用資産に占める現金の比率が約6%となり、2001年9月の米同時テロ以来、約21年ぶりの高水準になったと説明しています。

 投資家はFRBの急速なQT(量的金融引き締め)姿勢に対して、景気の過度な冷え込みを相当警戒し、現金比率を高めているようです。

予想を上回った2.1%と▲1.0%

 ドル/円は、米株の下落や米長期金利が一時の急上昇の動きから落ち着きを取り戻したことから頭を重くしています。加えて先週発表された日本のCPI(消費者物価指数)と1-3月期GDP(国内総生産)がともに予想を上回ったことから、日銀金融政策の修正の思惑が強まったことも影響しているかもしれません。

 日本の4月CPIは携帯電話通信料の値下げ要因剥落によって上昇すると予想されていましたが、予想幅2.0%に対して2.1%と予想を上回る結果となりました。携帯料金を除くベースのCPIは+2.6%と+2%半ばまで加速している状況となっています。

 また、1-3月期GDPはマイナスの予想でしたが、予想▲1.8%に対して▲1.0%の結果でした。予想よりもマイナス幅が小さかったのは、多くの地域に「まん延防止等重点措置」が適用されていたため個人消費が低迷すると予想されていましたが、その個人消費が▲0.03%と小幅減少にとどまったことが大きかったようです。

 先週のドル/円は、129円台後半から127円割れ寸前まで売られました。先週の動きによって、先々週の131円台の2番天井を確認した動きとなったようですが、ドル全体の動きを表すドルインデックスを見てみてもドル高の天井をつけ、ドル全面安の動きとなっています。

 今週はもう一度127円割れをトライし、127円が堅いかどうかを確認する動きが予想されます。24日には127円を割れましたが、一時的な動きかどうかを見極める週になりそうです。

 また、上値は130円台ではなく129円台、128円台が重たくなってきていることや、先週のクロス円の反発も一巡してきたことから、127円割れから125円台を目指す可能性も出てくるかもしれません。

 しかし、今週から来週にかけては月末、月初の需給要因もあるため、一気に円高が進まなければ、次回6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)に向けて再び利上げ幅や利上げペースの思惑が高まり、ドル高に動き出す可能性があることにも留意しておく必要がありそうです。

物価よりも景気後退リスク

 マーケットの焦点は物価から景気後退リスクに転じつつあります。米株は8週連続の後、今週に入ってさすがに反発していますが、ベアマーケット入りのリスクが消えたわけではなさそうです。

 今後は、企業決算や経済指標などの実態の数字チェックをし、本当に景気が後退するのかどうかを確認しながら次の方向を探っていくことになりそうです。

 18日のNYダウは1,164ドル安となりました。下げ幅は2020年6月以来、約2年ぶりの大きさとなりました。

 大幅下落の引き金になったのは、米小売大手ターゲット(TGT)の急落です。同社が18日に発表した2-4月期決算で、燃料費の高騰などを受けて輸送コストが上昇し、最終利益が半減となったことで株価は約27%急落しました。

 1日としては1987年のブラックマンデー以来の大幅な下げとのことです。

 前日17日には、米小売大手ウォルマート(WMT)が2-4月期決算を発表しました。やはり、燃料価格高騰や人件費拡大などコスト増が収益を圧迫し、25%の減益となりました。この決算を受けて株価は約11%下落しました。

 17日には4月の米小売売上高も発表されています。小売売上高は+0.9%と4カ月連続の増加で、高インフレにもかかわらず消費の堅調さを示した数字となりました。インフレによる家計への圧迫がまだ消費に大きく影響していないようですが、一方で、ターゲットやウォルマートの決算が示しているように企業はインフレによるコスト増に耐え切れなくなってきているようです。

 両社の決算は、いずれ個人の家計も耐え切れなくなってくるのではないかと連想させるのに十分な内容です。

 インフレ撲滅に突き進んできたFRBが、8週連続の株価下落や景気後退を示す経済指標を意識して、タカ派姿勢をトーンダウンする兆候が見えてくるかどうかに注目です。

 25日には、前回5月のFOMC議事要旨が発表されますが、タカ派色満載の内容と今後の理事たちの発言内容の違いが鮮明になってくれば、ドル/円の重い状況はしばらく続くかもしれません。

 一方、日本のCPIは、携帯電話通信料値下げ要因の剥落傾向が10月まで続くことが予想され、今後も2%前後で高止まりしていきそうです。日本銀行はすぐには方針を変更するとは思えませんが、国債市場や為替市場で思惑が高まり、催促相場が起こることは予想されます。

 ドル/円は、一時のような一本調子の円安相場ではなくなり、135円を目指す勢いはなくなったようです。当面は125~130円のレンジの中で居心地のよい場所を探す展開になりそうです。125~130円の半値である127.50円がひとつの目安の水準になるかもしれません。