今日の為替ウォーキング
今日の一言
まだ持っていないものについて考えるよりも、いま持っているものが無かったらどれほど困っていたかについて考えた方がいい
Don't Let Me Be Misunderstood
給料は変わらないのに物価が急上昇している世界の主要経済圏では、所得から消費者物価上昇率を差し引いた「実質所得」がマイナスになっている。その落ち込みぶりは激しく、不況時にしか見られないような水準まで悪化している。
しかし、中央銀行はエネルギー価格上昇が生むインフレをコントロールすることはできない。日銀が利上げしても電気代は下がらないし、国会議事堂の地下を掘っても石油は湧いてこない。
結局、「需要を減らすこと」が唯一の選択肢となる。例えば自家用車の運転の自粛を求め公共交通機関の利用を促進させる、あるいは節電や工場の休業を要請するなどだ。しかし、実質所得がすでに不況レベルにあるときに、需要を減らしすぎるのは危険な戦略である。
エネルギー節約という意味では、WFH(在宅勤務)も効果がある。週に3日自宅で仕事をした場合、欧州では1日あたり50万バレルの石油を節約できるとの試算がある。地球温暖化の影響も明らかだ。強制出社の企業は環境問題への取り組みが甘いというレッテルを貼られる時代が来るかもしれない。
消費者物価は、生活コストを正確に示していないのも事実だ。米国の消費者物価指数では、住宅所有に関する支出が2020年1月からほぼ7%上昇したことになっているが、住宅ローン支払者は借り換えよって出費を抑えている。
中古車価格は劇的に値上がりしたが、先進国の消費者で最近中古車を買った人はごく一部にすぎない。車を運転しない何億もの人々は、消費者物価指数の上昇率が示すほどの物価高を感じていない。つまり、景気の肌感覚からすると、消費力は経済統計の数字ほどには悪化していない。
もっとも、日本の場合は逆で、生活費は確実に上昇しているのに、スマホ料金の大幅下落で消費者物価指数が上昇していないように見える。経済統計が示す以上に日本人の消費力は落ち込んでいるのだが、政府も日銀も見て見ぬふりをしている。