急ピッチの資産圧縮検討

 6日に公表された3月のFOMCの議事要旨では、資産圧縮のペースが前回の倍近くとなる月950億ドルを上限に検討されていることが判明しました。

 内訳は国債が600億ドル、住宅ローン担保証券が350億ドルとなっています。償還が来た債券の再投資を停止する手法で保有額を減らしていくとのことです。

 FRBの前回の資産圧縮は2017~2019年に実行され、最大で500億ドルのペースで資産を圧縮し、当時の資産残高が4.5兆ドルから3.7兆ドルになった時点で金融緩和に転換しています(0.8兆ドルの圧縮)。

 今回の圧縮ペースは当時の2倍に近く、FRBはどこまで圧縮するのか明示していませんが、大規模緩和で9兆ドルまで膨らんだ現在の資産を毎月950億ドルで3年続けると3.4兆ドルの圧縮が進む計算となります。

 ある分析によると、保有資産が3年で3兆ドル減った場合、長期金利が約1%押し上げられるとのことです。米10年債金利は3月初めには1.71%台でしたが、直近では2.7%台となっており、ここ1カ月で急速にその押し上げ効果を織り込んでいったということになります。

 このように、ハト派のブレイナード理事が資産圧縮は急ピッチで始めるとのタカ派発言をした翌日に、3月のFOMCで前回の倍近くのペースで資産圧縮が進むことが検討されていたことがわかると、市場に驚きと警戒感が一気に広がり、金利上昇とドル高に拍車がかかりました。

 FRBが保有資産を縮小するQTは、売却ではなく満期償還を迎えた債券のうち再投資に回す額を減らす方法によって資産を圧縮していくとのことですが、保有額は減るため実質的な債券の売り手になります。

 これまで米国債発行額の6割を吸収していた圧倒的な買い手が売り手に回る影響は大きく、しかもそのペースが速いとなると、金利市場は相当その影響を警戒してきます。

 先週末には米10年債金利は3年ぶりに2.7%台に上昇し、ドル/円は週明け東京市場で125円台に上昇しました。

 黒田東彦総裁は相変わらずの緩和維持の姿勢を貫いているため、FRBがよりタカ派になればなるほど円安圧力が高まりますが、先週は円全面安というよりも、FRBの強まったタカ派姿勢を受けたドル全面高の動きでした。ドル/円だけでなく、ユーロもドル高によって再び1.08台に下落しました。