OECD、UNCTADの経済見通し
国際機関やエコノミストなどは、その影響度合いを発表し始めています。
3月17日、OECD(経済協力開発機構)は、2月24日のロシアのウクライナ侵攻開始から1年間の影響を分析しています。その分析によると、ウクライナ侵攻が世界の経済成長率を1%超押し下げ、原油や小麦など商品価格の高騰などで、世界の物価上昇率は2.5%近く上がるとの見方を示しています。
OECDは2021年12月時点で、2022年の世界のGDP成長率を4.5%、2023年は3.2%と予測しています。そしてGDP下押し効果は、ロシアにエネルギーを頼るユーロ圏で▲1.4%と大きく、米国は▲0.9%となっています。
ロシアとウクライナが世界全体のGDPに占める比率は合計2%と小さいですが、小麦の輸出で世界の3割、トウモロコシは2割、石油は1割強を占めています。小麦の輸出停止は多くの新興国で深刻な食糧不足をもたらす可能性があるため、新興国経済への影響が大きくなることが予想されます。
ちなみに日本のエネルギー輸入に占めるロシアの割合(2021年)は、液化天然ガス8.7%、原油3.7%となっています。
また、UNCTAD(国連貿易開発会議)はウクライナ侵攻の1カ月後である3月24日、貿易開発報告書の更新版を発表しました。報告書によると、2022年の世界の経済成長率は2.6%と予測しています。
ウクライナ侵攻による食料とエネルギー価格の上昇、制裁に伴う世界貿易の縮小、先進国の金融引き締め政策の影響によって成長率見通しを大幅に下方修正し、前回2021年9月見通し(3.6%)から▲1%の下押しとなっています。UNCTADの方がOECDよりも厳しい見方をしているようです。
国別でみると、ロシアの成長率見通しは▲9.6%下押しの▲7.3%、欧州は▲2.1%下押しの0.9%、米国は▲0.6%下押しの2.4%の成長率となっています。日本は▲0.1%下押しの2.0%と影響は軽微となっています。
みずほリサーチ&テクノロジーズの分析では、エネルギー禁輸などの追加制裁が実行された場合の厳しいシナリオも予測しています。それによると、欧州は▲8.9%と大幅に下押しされ、▲4.7%のマイナス成長、米国は▲2.5%下押しの1.0%の低成長となっています。
日本は▲1.6%下押しの2.1%とやや高めの成長予測となっています。欧州は最も深刻な影響を受け、米国も1%の低成長だと、利上げペースは遅くせざるを得なくなるかもしれません。