2021年通期に10%増益、不良債権指標の改善で安定成長持続へ

現地コード 銘柄名
01398

中国工商銀行

(インダストリアル・アンド・コマーシャル・バンク)

株価 情報種類

4.81HKD
(4/1現在)

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 中国の4大国有商業銀行の一つ、中国工商銀行の2021年12月本決算は、純利益が前年比10.3%増と、BOCIの予想を小幅に上回った。うち10-12月期は前年同期比10.6%の増益(7-9月期も同10.6%増、1-9月期は同10.1%増)。国内最大の銀行の一つとして、規模の面で着実な成長を遂げた。期末の資産、負債、貸出、預金は1年前との比較で5.5%増、4.8%増、10.9%増、5.2%増。通期の引当前業務純益(業務純益は営業利益に相当)は前年比5.3%増。不良債権比率は10-12月に続き、低下傾向を示した。厳格な不良債権基準に基づき、不良債権引当カバー率(不良債権に対する貸倒引当金の比率)の引き上げも実施している。BOCIは同行H株の低バリュエーションを指摘。2022年も資産の健全を維持する中、安定的な利益成長を遂げるとみて、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

 資産の質は引き続き安定的で、不良債権比率は12月末に1.42%と、9月末の1.52%、前年末の1.58%から低下。その半面、不良債権引当カバー率は12月末に205.8%と、9月末の196.8%、前年末の180.7%からさらに手厚くなった。また、減損損失は2021年に前年比0.02%減と、前年の同13.2%増から小幅の縮小に転じた。BOCIは2022年には、不良債権比率がさらに0.02ポイント低下するとみている。

 2021年には中国政府の方針に従って、実体経済や中小企業向けの金融支援を強化したものの、純金利マージン(NIM)は前年比で緩やかな低下となり、10-12月期は安定的だった。通期のNIMは2.11%と、利払い資産の利回りや負債コストに関する圧力の緩和で、1-9月並みの水準。前年比では0.04ポイント縮小した。BOCIは2022年のNIMについて、さらに0.02ポイントの縮小を見込む。

 不動産引き締め政策を受け、貸出全体に占める不動産セクター向け融資の割合は12月末に3.4%と、前年比で0.3ポイント低下。同融資の不良債権比率は4.79%と、1年前の2.32%から上昇した。ただ、BOCIは中国当局がすでに、不動産政策を緩和方向に調整しつつあると指摘している。

 一方、役務取引等利益(純手数料収入)は2021年に前年比1.4%増。資産保管業務や、トラストおよび代理サービスの伸びを受け、前年の0.5%増から小幅に加速した。経常収益に占める役務取引等利益の割合は、前年の16.4%から15.5%に低下している。

 BOCIは2022年の平均ROE(株主資本利益率)について12.0%を見込む。同行H株の現在株価は2022年予想PBR(株価純資産倍率)で0.43倍の水準。資産の健全性や安定的な利益成長、適度な高ROE、さらには約8%に上る配当利回りなどを理由に、同行株価は過小評価されていると指摘。2022年予想PBR0.6倍をあてはめ、目標株価を引き上げた。株価の先行きに対し、強気見通しを継続している。