「国策に売りなし」政策が企業を動かし、ビジネスチャンスを生む!

 古くからの相場格言に「国策に売りなし」があります。政府が旗を振る政策には予算が付いて、人や会社が動き、やがて社会が変わっていくものです。こうした社会の変わり目をビジネスチャンスとする企業に投資するのも面白そうです。

「国策」は文字通り、国の政策です。ただ、国防なら防衛省、脱炭素なら経済産業省と環境省と、担当する役所がそれぞれ情報発信しています。官庁のホームページを見ても該当する政策について書かれている文書の置き場を見つけにくいことが少なくありません。

 国策を見つける手っ取り早い方法は、自由民主党のホームページでしょう。政権与党歴が長く、有権者の支持獲得を狙って情報発信しているので、官庁サイトよりわかりやすいのが特徴です。内容は盛りだくさんですが、投資家がチェックしておきたいのは重点政策です。

 岸田文雄首相肝いりの「新しい資本主義」、感染症対策、教育、国防など各分野の政策についての考え方が簡潔にまとまっています。公約や政策パンフレットもダウンロードできます。

 岸田首相が2021年9月29日に自民党総裁選を勝ち上がって半年が経過しましたが、安倍晋三政権、菅義偉政権のときとは異なり、「新しい資本主義」を掲げる以外に、独自色の強い政策というものはあまり見えていません。そのため、「国策」としては、これまでのデジタル化、グリーン化政策、教育・子育て支援、国土強靭(きょうじん)化などが当面は引き継がれていくものと考えられます。

経済情勢の大きな変化は、新しい「国策」が生まれるきっかけに!!

 経済情勢が大きく変化した場合、それに対応する政策が打ち出されます。最近では、新型コロナウイルスのまん延が挙げられるでしょう。ワクチンや治療薬の開発支援などはまさしく「国策」となっています。また、外出自粛の影響で大きな打撃を受けた観光業界や飲食業界の支援に向け、「Go Toキャンペーン」という新たな施策も打ち出されました。

 現在は、ロシアによるウクライナ侵攻が経済情勢の大きな変化といえます。今回のロシアの軍事侵攻は、世界的に将来の防衛予算拡充につながっていくものと考えられます。もちろん、日本においても防衛費拡充の議論が高まっていく可能性が高いでしょう。

 さらに、直接的な関連は不明ですが、トヨタ自動車が取引先の部品メーカーに対するサイバー攻撃により、一時的に国内にある全工場の一時稼働停止に追い込まれました。インターネットのセキュリティを強化する必要性も高まっていくものとみられます。

 ロシアがエネルギーや食糧などの重要な供給元であることから、今後はエネルギー価格や食糧価格の上昇が予想されています。こうした中で、国内のエネルギー政策にも変化が生じてくるものとみられます。再生可能エネルギーの整備をより早く進める必要性が強まっているほか、同エネルギーの普及が進むまでは、原子力発電所の再稼働なども進めていかなければならなくなるでしょう。

「国策」をテーマにして銘柄を物色する際に注意したいのは、「国策」に関連する分野が、事業全体のどの程度を占めているのかです。「国策」となって市場が拡大したとしても、業績に与えるインパクトが限られる可能性もあります。少なくとも業績の押し上げ要因にはなるのですが、思惑が先行し過ぎて、実態以上に株価が上がってしまっている場合は、反動安のリスクが大きくなります。割安な状態にある銘柄に注目する方が、たとえ下落したとしても損失は小さくなるでしょう。

 以下の銘柄は、三つのポイントでセレクトしました。ぜひ参考にしてください。

  • 20万円あれば買える
  • 配当利回り2%以上
  • 国策とつながりが深い事業を行っている

初めてでも選びやすい「国策」テーマ関連株10選

※株価などのデータは3月25日現在
※コード順

NECネッツエスアイ(1973)
株価 1,804円
いくらから
買える?
18万400円
「国策」テーマ DX(デジタルトランスフォーメーション)
どんな会社? 企業のネットワークインフラ構築やテレビ会議などオフィスで使う情報・通信システムサービスを提供。ネットワーク関連の売上高は国内トップクラス。2022年3月期の経常利益は前期比10.6%減の228億円となる見通し。ミャンマーの政情不安を受けた一過性の費用が増加するもよう。年間配当金は15期連続での増配を計画。自社においては2007年から働き方改革に取り組んでおり、蓄積してきたノウハウをデジタル商材の拡充や顧客への提案に生かせる状況となっていることが強み。
E・Jホールディングス(2153)
株価 1,222円
いくらから
買える?
12万2,200円
「国策」テーマ 国土強靭化
どんな会社? 官公庁向けが中心の建設コンサルタント会社。調査・測量から計画・設計、補償コンサルタントまで一貫したサービスを提供。国土強靭化対応、再生可能エネルギーなども重点分野。2022年5月期の経常利益は前期比1.1%増の41億円となる見通し。地方自治体の予算減少、人材強化や研究開発費など先行投資負担で微増益にとどまる見込み。2021年から国土強靭化のための5カ年加速化対策予算(総額15兆円)がスタートしており、官公庁向けが業務の中心である当社にはストレートに追い風となる。
ライク(2462)
株価 1,991円
いくらから
買える?
19万9,100円
「国策」テーマ 子育て支援
どんな会社? モバイル販売、物流・製造業界、建設業界向けなどの人材サービス、保育園運営(383施設、2022年1月時点)、介護施設運営(25施設、同)を3本柱とする。2020年8月に保育園運営のライクキッズを100%子会社化している。2022年5月期の経常利益は前期比3.0%増の55億円となる見通し。認可保育園の新規開設に加えて、受託保育などの新規受託も着実に獲得しているもよう。保育市場は、業界最大手クラスの当社でもシェア(市場占有率)1%程度に過ぎず、知名度や規模の大きさを生かしたシェア拡大余地が大きいだろう。
駅探(3646)
株価 428円
いくらから
買える?
4万2,800円
「国策」テーマ Go Toキャンペーン
どんな会社? パソコンやスマートフォンのサイト・アプリで、乗換案内や時刻表の検索サービス「駅探」を運営している。駅周辺の店舗情報提供サービスなども2021年10月から手掛けている。2022年3月期の経常利益は前期比14.7%増の2億3,700万円となる見通し。コロナ禍での外出自粛や移動制限の影響が軽減される形となる。「Go To トラベル事業」対象旅行商品の割引販売を行うなど、人の流れの活性化は大きなビジネスチャンスにつながる。JR東海や北海道など、事業連携積極化による事業拡大余地も大きい。
ラック(3857)
株価 936円
いくらから
買える?
9万3,600円
「国策」テーマ サイバーセキュリティ
どんな会社? 1995年からインターネットセキュリティ事業を開始している業界の先駆者。セキュリティ診断、監視・運用、コンサルティング、人財育成などの関連サービスを提供。KDDIと資本提携、合弁会社も展開している。2022年3月期の経常利益は前期比7.4%減の20億円となる見通し。一部大型案件一巡のほか、基幹システム刷新などの投資負担が重しとなる。2022年1月には野村総合研究所と資本提携、京セラグループ会社との連携など、事業拡大に向けた積極的なかじ取りに注目。
関東電化工業(4047)
株価 1,091円
いくらから
買える?
10万9,100円
「国策」テーマ EV(電気自動車)
どんな会社? 半導体の製造過程で使用される各種フッ素ガスで強みを持つ化学品メーカー。水処理や化学薬品の製造に使われるか性ソーダや塩酸、漂白剤や殺菌剤として使われる次亜塩素酸ソーダなども扱う。リチウムイオン電池材料の一つとなる電解質でも実績が豊富。2022年3月期の経常利益は前期比88.1%増の105億円となる見通し。半導体用ガスの価格上昇などで、2021年4-9月期決算発表時に大幅上方修正している。電池材料である電解質では推定1割のシェア(市場占有率)。PER(株価収益率)が10倍割れとEV関連銘柄では割安感。
日水製薬(4550)
株価 994円
いくらから
買える?
9万9,400円
「国策」テーマ 感染症対策
どんな会社? 日本水産の子会社で、臨床診断薬の細菌検査におけるトップ企業。食品製造企業の品質検査や製造施設の衛生管理に用いる産業検査薬なども扱う。再生医療分野に用いられる培地(細胞や微生物の生育環境)の開発にも注力。2022年3月期の経常利益は前期比60.0%増の15億3,000万円となる見通し。新型コロナウイルス感染症の遺伝子検査薬が売り上げ増加に寄与したもよう。2021年12月からは、オミクロン変異株の効率的な検出に有効な研究用試薬の取り扱いも開始している。
木村化工機(6378)
株価 870円
いくらから
買える?
8万7,000円
「国策」テーマ 原発再稼働
どんな会社? 化学装置・プラントの開発・設計・製作・工事を行っている。液体や気体から不純物を除去したり、回収したりする装置を主に扱う。また、核燃料の輸送容器や濃縮関連機器、放射性廃棄物処理装置など、原子力装置での実績も豊富。2022年3月期の経常利益は前期比41.9%増の27億円となる見通し。顧客の省エネ化につながる製品などのニーズが広がっているもよう。過去には、低濃度アンモニア水から高純度水素を製造して燃料電池の発電に成功しており、次世代エネルギーである「水素」関連としても位置付けられている。
エヌエフホールディングス(6864)
株価 1,305円
いくらから
買える?
13万500円
「国策」テーマ 再生可能エネルギー
どんな会社? 電子計測器を主軸に、電源パワー制御関連機器、家庭用蓄電システムなども展開。「はやぶさ2」のレーザー高度計に採用されたほか、量子コンピュータ(膨大な計算量によって従来では難しかった問題を解くことが期待されるコンピュータ)分野でも実績。2022年3月期の経常利益は前期比40.9%増の10億円となる見通し。自動車や電子部品関連などの設備投資回復が背景にある。電力供給の安定化が課題となる再生エネルギーでは、蓄電の重要性も高まるため、伊藤忠商事と共同開発している蓄電システムの需要拡大が望める。自動車業界が普及拡大に取り組むEV用急速充電器でも、開発段階で同社が手掛ける伝送効率測定などが必要となる。
新明和工業(7224)
株価 941円
いくらから
買える?
9万4,100円
「国策」テーマ 防衛
どんな会社? 国内トップシェア(市場占有率)のダンプトラックなど、特装車が主力事業となっており、水中ポンプなどの産業機械、立体駐車場、海外航空機向けの翼部品なども手掛けている。国内唯一の飛行艇メーカーで、「US-2型救難飛行艇」の製造を担っており、防衛省の契約実績上位企業でもある。2022年3月期の経常利益は前期比15.9%減の94億円となる見通し。ボーイング「787」向けの生産減少が重しとなる。なお、2021年4-9月の売上高が前年同期比5.1%増に対して受注高は同28.4%増と拡大しているため、来期以降の業績拡大につながる。