今こそ気を引き締めて
ロシア・ウクライナ情勢はまだ予断を許さない状況が続いていますが、日米の株式市場は、今月初旬につけた安値から、下げ幅の「半値戻し」を達成しました。
加えて、為替市場では、1ドル120円台まで円安が進行し、外貨建て資産に投資する投資信託には追い風が吹いています。コツコツと積立を継続してきた方の中には、ここにきてようやく含み益が生じ、ホッと胸をなでおろしたという方も多いのではないでしょうか。
しかし、足元のような「半値戻し」を達成したタイミングほど、気を引き締めなくてはいけません。「最悪期を脱した」という思い込みが、リスクの過小評価を誘引し、結果として「余分なリスク」を取ることにつながるためです。ここからは、半値戻しを達成した今、特にやってはいけないことについてみていきます。
やってはいけない(1):レバレッジをかける
本連載でこれまで何度も取り上げてきた、基準となる指数の数倍の値動きを目指して運用する「レバレッジ投資」(ブルベア型含む)は、極めてリスクの高い投資方法です。投資元本の何倍もの投資効果を期待できるという仕組みそのものは、個別株投資における信用取引とおおむね同じです。
個別株の信用取引では、投資元本以上の損失が発生する可能性があり、その点では、基準価額がマイナスにならない投資信託の方が安心できるかもしれません。しかし、投資タイミングを見誤ると、みるみるうちに基準価額が下落していきます。
レバレッジ投資を行う上で最も重要なのは、市場の方向感の見極めです。レバレッジ型ファンド(投資信託)には、株式市場が一方向に動かないとリターンが出にくいという特徴があります。
今後数カ月の間に相場が上昇トレンドをたどると思う場合は「ブル型」を、反対に、下落トレンドをたどると思う場合は「ベア型」を選択すればよいのですが、このいずれの確信も得られない場合は、そもそもレバレッジ型に投資してはいけません。
短期的に上昇と下落を繰り返す、いわゆるボックス圏の相場では、「負の複利効果」が働いてしまい、基準価額が日々少しずつ下落してしまうためです。
(詳しくはこちらの記事をご参照)
なお、既にレバレッジ型で相応の含み損が発生してしまっている場合は、勇気をもって「損切り」し、ポジションを解消するという決断も必要です。投資信託では、損失が発生していても、保有している以上は信託報酬がかかり続けるということを今一度認識しましょう。
※レバレッジ型ファンドについて詳しくは以下の記事をご参照
やってはいけない(2):戻り基調の銘柄に集中投資する
集中投資とは、あえて特定の銘柄や業種に集中的に投資するという、分散投資の対極にある投資方法です。足元では、日本株よりも米国の「S&P500種株価指数」に連動する商品などの方が戻りが早く、こうした状況下では、つい米国株に集中的に追加投資したくなります。
しかし、このタイミングで米国株への投資を増やすことは、リバランス(資産の再配分)の観点からあまりおすすめできません。特定の資産(ファンド)が値上がりしてポートフォリオ全体に占める割合が高くなると、必然的にその資産のポートフォリオにおける影響力が大きくなります。
影響力が大きくなると、そのファンドが急落したときにポートフォリオ全体がダメージを受けることになります。長期資産形成に資するポートフォリオを作る上ではむしろ、戻りが鈍い、あるいは、出遅れている資産にも目を向けることが重要です。
※リバランスについて詳しくは以下の記事をご参照
以上みてきた通り、投資信託で失敗する人の多くは、必ずしもファンド選びに失敗しているというわけではなく、身の丈に合わない「余分なリスク」を取ってしまった結果、ポートフォリオを自分でコントロールできなくなっているというところに失敗の原因があります。相場が大きく動いているときほど冷静にリスクと向き合う習慣を身につけましょう。