3.注目銘柄-グローバルファウンドリーズ

1.半導体受託生産業者世界第4位

 グローバルファウンドリーズ(GFS、NASDAQ)は世界第4位のファウンドリ(半導体受託生産業者)です。元々はAMD(アドバンスド・マイクロ・デバイシス)の生産部門でしたが、2009年に分離独立しました。その後、2021年10月28日、ナスダックに上場しました。7ナノ半導体の開発を2018年に中止したため、現在は12ナノから以前の半導体を受託生産しています。

 グローバルファウンドリーズの2021年12月期4Q(2021年10-12月期)は、売上高18.47億ドル(前年比73.9%増)、営業利益0.87億ドル(2020年12月期4Qは4.91億ドルの赤字)となり、2021年12月期3Qに続き営業黒字となりました。半導体需要の増加に従って、グローバルファウンドリーズの売上高も四半期ごとに増加しており、四半期ベースでは2021年12月期3Qに営業黒字に転換しました。

 この結果、2021年12月期通期では、売上高65.85億ドル(同35.7%増)、営業損失0.60億ドル(2020年12月期は16.56億ドルの赤字)となりました。営業赤字幅は大幅に縮小しました。

表1 グローバルファウンドリーズの業績

株価(NASDAQ)    76.22米ドル(2022年3月24日)
時価総額    39,787百万ドル(2022年3月24日)
発行済株数    540.0百万株(完全希薄化後)
発行済株数    522.0百万株(完全希薄化前)
単位:百万ドル、ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後発行済み株式数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前発行済み株式数で計算。
注3:会社予想は予想レンジの中心値。

表2 ファウンドリ市場上位10社

単位:百万ドル
出所:TrendForce2022年3月14日付けプレスリリースより楽天証券作成

2.スマート・モバイル・デバイス向けなど各分野向けが好調

 2021年12月期4Qの分野別売上高を見ると、主力のスマート・モバイル・デバイス(主にスマートフォン向け)中心に、売り上げは好調です。

 スマート・モバイル・デバイスはスマートフォンに装着するWiFi用チップやイメージセンサー、電源用チップなどを受託生産しており、これらが好調でした。

 通信設備・データセンター向けは、通信設備向けでは5G向け各種チップ、データセンター向けでは光デバイスが順調に伸びました。前年比では3.5%減となりましたが、2020年12月期4Qの水準が一時的に高かったためであり、基調は順調です。

 家庭用&産業用IoT向けも順調でした。WiFi市場で旧規格のWiFi5から新規格のWiFi6へ切り替わることによってチップ需要が増えました。非接触型機器、ワイヤレス接続(オーディオ向けなど)、エッジコンピューティング、電力管理向けなどのチップも増加しました。

 自動車向けはもともと小さかったですが、過去2年間で急増しました。ADAS、安全関連、インフォテインメント(運転席周辺の情報系)向けが増加しました。2022年にはこれまでの分野に加え、4DレーダーとEVバッテリー管理向けのチップ生産が加わる模様です。

 一方で、PC向けは顧客のAMDが7ナノ半導体へシフトしているため、減少しました。ただし、パソコン用チップセットの中に、10ナノ台の半導体が必要な部分があるため(例えば、各種のコントローラICなど)、この方面に注力する方針です。

 また、ウェハ出荷枚数(300ミリウェハ換算)は2021年12月期3Qから4Qにかけて2.1%増、ウェハ1枚当たり売上高も同じく6.4%増となりました。ウェハ1枚当たり売上高の増加の中には高単価品とともに減価償却費の増加と需給逼迫による値上げ分が含まれていると思われます。

表3 グローバルファウンドリーズの分野別売上高(四半期)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

表4 グローバルファウンドリーズの分野別売上高(年度)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ6 グローバルファウンドリーズのウェハ出荷枚数(300ミリ換算)

単位:1,000枚、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ7 グローバルファウンドリーズ:ウェハ当たり売上高

単位:ドル/枚(300mm換算)、出所:会社資料より楽天証券計算

3.2022年12月期1Q会社側ガイダンスは黒字拡大の予想。通期でも業績好調が予想される

 2022年12月期1Qの会社側ガイダンスは、売上高18.80億~19.20億ドル(前年比32.6~35.4%増)、営業利益1.01億~1.45億ドル(2021年12月期1Qは0.96億ドルの営業赤字)となっており、引き続き売り上げ好調により営業利益の増加が続く見通しです。分野別には、PC向けを除く全分野が順調に伸びると予想されますが、特に自動車向けと家庭用&産業用IoT向けの高成長が予想されます。

 設備投資について見ると、2020年12月期5.92億ドル、2021年12月期17.66億ドル、2022年12月期会社計画45億ドルと、会社側は今期に大型設備投資を計画しています。顧客からの発注が多いためです。今期の45億ドルと来期に予想される45億ドルよりも少ない設備投資によって、2023年12月期のウェハ出荷能力は前期比1.5~1.6倍になる見込みです。

 これらを総合的に考慮して、楽天証券では2022年12月期を売上高79億ドル(前年比20.0%増)、営業利益6億ドル(2021年12月期は0.60億ドルの赤字)、2023年12月期を売上高95億ドル(同20.3%増)、営業利益13億ドル(同2.2倍)と予想します。大型設備投資を実施することによって、本格的な成長路線へ向かう可能性があります。

グラフ8 グローバルファウンドリーズの設備投資額

単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

4.今後6~12カ月間の目標株価を100ドルとする

 グローバルファウンドリーズの今後6~12カ月間の目標株価を100ドルとします。楽天証券の2023年12月期予想EPS 2.04ドルに、2023年12月期営業増益率116.7%増より、金利上昇局面であることを考慮し想定PERを控えめに50倍前後として当てはめました。

 中長期で投資妙味を感じます。

 グローバルファウンドリーズは、シンガポール、アメリカ(ニューヨークに2件、バーモントに1件)、ドイツに工場を持っています(生産規模はシンガポール、アメリカ、ドイツの順に大きい)。アメリカにファウンドリ工場を持っていることから、地政学的リスクを懸念する半導体ユーザーからの発注が増える可能性があります(既に増えている可能性もあります)。また、バイデン政権が成立させようとしているアメリカ半導体企業への補助金を受ける可能性もあります。このような点は、グローバルファウンドリーズに投資する際の重要な注目点です。

 もう一つの注目点は、需給逼迫の度合いです。7ナノから先の先端半導体の設備投資は、TSMC、サムスン、インテルという資金力の強力な大手半導体メーカーが行っているため、大型設備投資が進行するにつれて、徐々に需給逼迫度合いが緩和されると思われます。

 一方で10ナノ台から以前の汎用半導体/成熟半導体は、メーカーの企業規模が相対的に小さいため、設備投資に限界があります。一方で非常に幅広い半導体需要があります。そのため、最近では一けたナノ台よりも10ナノ台から以前の汎用半導体のほうが、不足感が強くなっている模様です。このことは、グローバルファウンドリーズにとって、今回の半導体ブームが長期化することや取引条件の改善につながる可能性があります。