中国経済の減速も金製品需要は好調、投資家の懸念を払しょくへ

 中国経済の減速による宝飾品市場への影響に対して投資家の懸念が広がっているが、BOCIは最近のマクロ経済統計や業界データが懸念を払しょくすると指摘。大手2社の2022年1-3月期の小売売上高を楽観し、両社への強気見通しを継続した。ただ、香港での新型コロナの感染拡大を受け、六福集団(00590)に対する投資心理は後退しているとの見方。2社の中では周大福珠宝(01929)のアウトパフォームを見込んでいる。

 まず中国黄金協会が集計した業界データを見ると、中国における金製品の売上高は旧正月休暇7日間(1月31日-2月6日)に前年同期比13%増。金製品に対する旺盛な需要をうかがわせた。特に人気が高かったのは、古代中国風デザインの金製品および高質金製品。BOCIはバレンタインデーと重なった前年の旧正月休暇(2021年2月11-17日)の売り上げ実績の高さを指摘した上で、13%増との数字を前向きに評価し、1-3月期の宝飾品売り上げを楽観視している。

 宝飾品販売各社は製品構成の強化に動き、古代中国風デザインの金製品(例えば周大福珠宝の傳承シリーズ)など高利幅商品のウエートを高めている。国際金相場がたとえ大きく変動しても、粗利益率の悪化をある程度食い止める効果が期待できるという。

 一方、マクロ経済データも、宝飾品セクターに対するポジティブな見方を後押ししている。BOCIによると、中国の宝飾品販売額は信用伸び率と相関関係にあるが、2022年1月の金融統計は予想以上に強く、マネーサプライM2、社会融資総量がいずれも市場予想を大きく上振れた。こうした数字は宝飾品販売の支援材料になるという。特に有望なのはダイヤモンドなどの宝石類ではなく、金製品。“国潮”(国産ブランド志向、中国の伝統的なデザイン志向)の流れを受け、中国では若年層も金製品を好む傾向が強い。金製品にはまた、インフレや元安に対するヘッジ手段としてのニーズも期待できる。

 BOCIはこの旧正月連休中の宝飾品販売の伸びが、既存売り上げ伸び率や新規出店数、卸売販売額といった各社の業務統計の好調さを示唆しているとの見方。六福集団、周大福珠宝ともに販売拡大に向け、出店目標を達成する可能性が高いとしている。

 個別では、短期的に周大福珠宝を選好。2022年度(3月期)に1,200店の新規出店を達成し、期末の店舗総数が前年比26%増の5,800店に到達するとみている。また、マーケットも短期的には六福集団より周大福珠宝を選好するとし、その理由として、香港での新型コロナの感染拡大による渡航制限の長期化見通しを挙げた。この2社では、周大福珠宝のほうが香港・マカオ業務のウエートが小さい(2022年度に13%の予想)。

 一方、BOCIは宝飾品セクターの潜在リスク要因として、中国の一部ロックダウンに伴う小売売上高の予想以上の悪化を指摘。ほかに、金価格の変動が利幅の低下やヘッジ損失につながる可能性を挙げている。