今日の為替ウォーキング

今日の一言

真のチャンピオンというのは、負けた後にその価値が判る

Black Night

 2022年の最大のリスクとは何か?それは新型コロナでも、米中関係でも、ウクライナでもない。金融市場にとっての最大の脅威は「中央銀行」だ。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が2月16日に公表した1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録によると、FOMCメンバーは高インフレに対する懸念のもと、3月の利上げが適切であるとの考えで一致した。ただ、そのスピードやバランスシート縮小については、今後の課題として具体的な議論はなかったようだ。

 マーケットはFRBより先を走っている。3月に0.5パーセントの利上げ、それ以降も0.25パーセント利上げを5回連続して実施、年末のFF金利は1.75%まで上昇すると見る。しかし、今は後手に回っているFRBがマーケット以上に攻撃的になる可能性もある。中央銀行の政策は視界不良なのだ。

 FRBだけではない。ECB(欧州中央銀行)は、つい最近までインフレは一過性であり、今年の利上げは「ありえない」と主張していた。ところが、2月のECB理事会では、利上げは「データ次第」に変わり、年内利上げも否定しなかった。マーケットはすでに、ECBが今年8月に量的緩和を終わらせ、直後の9月に利上げすると読む。

 RBA(豪準備銀行)は、FRBやECBより利上げに慎重なスタンスだが、利上げの条件として掲げている雇用市場の改善が進んでいることもあって、いつまでRBAがハト派姿勢を続けていられるか疑問だ。RBAは5月に量的引締めを始め、8月には利上げが始まるとマーケットは考える。

 数カ月前までは利上げはしないとガイダンスを行っていた中央銀行が、突然利上げを始めるなど、2022年の中央銀行の政策の予測はとても難しくなっている。中央銀行の金融政策は、国の経済活動に大きな影響を与える。不透明な中央銀行の政策がリスクなのだ。

 中央銀行の政策変更の動機は「インフレ」だ。インフレはグローバルな事象ではなく、各国の経済事情によって異なるローカルな問題といわれるが、今のインフレは米国だけではなく、欧州、英国、中国と、世界同時多発的に発生している。

 日本でも、1月に食パンの値段が10%近く値上げされたことを皮切りに、今年は食料品や衣料品、家電や自動車、保険料から交通運賃に至るまでほぼ全分野の商品が大幅値上げとなるのは避けられない。昨年11月の国内企業物価指数は、すでに41年ぶりの上昇となった。

 最近は、食品や日用品で、パッケージはそのままなのに、中身が明らかに少なくなっていることが増えている。これは「シュリンクフレーション」といって、商品の価格は変わらないままその内容量が少なくなっていく(shrink(縮小)とinflation(インフレ)の合成語)ことで、立派なインフレ形態の一つ。これからの日本はシュリンクフレーションと値上げがダブルで発生するだろう。

 では、このインフレはどのようにして始まったのか。引き金は新型コロナだ。2020年3月に新型コロナ感染が大流行して、世界の主要都市が次々とロックダウンを導入した。多くの人々は仕事を失い、移動の自由を奪われるなかで、中央銀行は緊急利下げと未曽有の量的緩和を行い、政府は経済対策として現金給付を決定した。

 2021年になってコロナワクチンが普及し始め、昨年1年で米国では75%、日本では80%、世界全体でも50%が部分接種を完了。そのおかげもあって移動制限が緩和され、人々が再び自由に外出できるようになると、「リベンジ消費」と呼ばれる時間差の消費需要が大発生した。この消費者のヘドニズム(快楽主義)は、ロックダウン期間中の小売店の在庫が品薄だったことと重なって、流通網に多大な負荷をかけた結果、インフレが大発生した。

 しかし、給付金をすべて使い切ってしまったら、異常な需要は終息して、インフレも波が引くようにいなくなる可能性がある。インフレへの警戒がマックスに高まっている今こそが、異常から正常への転換点なのかもしれない。

今週の 重要経済指標

出所:楽天証券作成