今週はウクライナの緊迫で不穏なスタート
結局、12日(土)の米露首脳会談は平行線のままもの別れとなったため、地政学リスクへの警戒感は続いている状況で今週が始まりました。
週明け14日(月)には、再びドル/円は下落し、115.02円*を付けましたが、115円は割れませんでした。
その後、「ロシアのラブロフ外相が欧米との対話継続を提案し、プーチン露大統領からの了承を得た」との報道を受けてウクライナ侵攻の警戒感がやや後退し、ドル/円は買い戻されました。
また、タカ派のブラード・セントルイス連銀総裁が「金融引き締めの前倒しが必要」との認識を改めて強調したことで115.75円*まで上昇しました。しかし、反発は長続きせず115円台前半に押し戻されました。
*…筆者推計の参考値
15日(火)、「ウクライナ付近に配備する一部のロシア部隊が軍事演習を終え、基地に帰還している」との報道が伝わると、ウクライナ情勢を巡る緊張緩和への期待感から欧州株が上昇し、ドル/円も115円台半ばを超えた動きとなりました。
また、15日のドイツ・ロシア首脳会談で、プーチン大統領が「我々は欧州で戦争を望んでいない」と述べ、米欧との協議を継続する意向を示したことからNY株は大幅高となり、ドル/円も前日の戻り高値115.75円*を抜き、115.88円*まで上昇しました。
このままウクライナ情勢の緊迫が弱まればよいのですが、バイデン大統領は15日午後の記者会見で「ロシアがウクライナに侵攻する可能性はまだ高い」とし、「一部部隊の撤収はまだ確認していない」と述べています。
そして16日はロシアによるウクライナ侵攻が警戒される日となっており、要警戒との空気はマーケットにまだ残っています。ドル/円も115円台半ばで様子をうかがっているような値動きとなっています。
*…筆者推計の参考値
以上のように先週から今週にかけての動きを述べましたが、10年に一度、あるいは20年に一度の欧州地政学リスクが高まったため、やや詳細に述べました。この2月中旬に地政学リスクが高まった時のドル/円の値動きは、今後のテクニカルポイントとして参考になります。
今週は、地政学リスクへの警戒感が強まり115円をブレイクするのか、あるいはウクライナ情勢を巡る緊張緩和とインフレへの警戒感から116円半ばをブレイクするのかどうかに注目です。しかし、地政学リスクとインフレリスクの警戒感の両方の影響を受けている株式市場が安定しない限り、ドル/円の戻りに勢いはみられないかもしれません。
また、やっかいなのは、もし、ウクライナ侵攻が現実となった場合、あるいは侵攻がなくとも緊張状態が続く限り、原油高と穀物相場高の要因が加わることによってインフレリスクがさらに高まる可能性があるというシナリオです。産油国ロシアへの制裁による原油の供給不安、穀倉地帯ウクライナの穀物供給不安に加え、値上がり期待の投機が加わることが予想されます。
そして、中央銀行もインフレ高を抑制するためには金融引き締めが必要となりますが、金融引き締めを早めすぎると景気に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期の金融引き締めや過度の金融引き締めには、慎重に対応せざるを得なくなるかもしれないという、かなり難しい政策運営に直面することになりそうです。
マーケットはかなり混乱することが予想されます。一本調子の円高、一本調子の円安が進むと思い込むよりも、半身構えで柔軟に相場に臨んだ方がよさそうです。