「見えにくいリスク」は超長期的視点の金上昇要因

 防衛白書には次の記載もあります。「純然たる平時でも有事でもない幅広い状況を「グレーゾーンの事態」と呼ぶ。例えば、国家間において、権益をめぐり主張が対立し、一部の当事国が、武力攻撃にあたらない手法で影響力を強め、現状の変更を試み、別の当事国に対して主張・要求の受け入れを強要しようとする状況を指す」(一部要約)

 また、同白書はハイブリッド戦を含む多様な手段により、グレーゾーンの事態が長期にわたり継続する傾向にあると指摘しています。こうしたことは、「武力衝突と有事は同じ意味」「有事は数年で終わる傾向がある」という認識を直ちに改めなければならないことを訴えていると言えるでしょう。

図:「グレーゾーンの事態」と「見えにくいリスク」

出所:防衛白書などより筆者作成

 これは、金(ゴールド)市場に関わる人々は特に、関心のベクトルを向けるべき事柄だと、筆者は考えています。「ハイブリッド戦」が横行する「グレーゾーンの事態」が長期にわたり、継続するのであれば、「見えにくいリスク」が長期的に継続(資金を逃避させる需要が強い状態が継続)する可能性があるためです。

「ハイブリッド戦」とそれと対極をなす「武力戦」を以下のとおり、比較しました(相対比較)。コストや物理的損害が相対的に小さい「ハイブリッド戦」の方が、継続可能期間が長いと言えます。(「グレーゾーンの事態」が長期にわたり継続することの一因)

 事態発生時の体感度や実施時の合意形成の難易度が低いこと(リスク発生やその予兆が見えにくく、とがめられにくいこと)や、同時発生の可能性が高いことも、継続可能期間が長い理由の一つと言えるでしょう。

図:「ハイブリッド戦」と「武力戦」の比較(相対比較)

出所:筆者作成

「今、世界がグレーゾーンの事態にある」「見えにくいリスクが周囲にある」と認識している人は少ないでしょう。危機を危機と認知しない多数の市民が、将来、「今が危機だ」と認知したときにどのような行動をするでしょうか? よりどころとなるものを求めるでしょう。何を求めるのでしょうか?

 筆者を含めた一般市民の習性(危機を感じた時、盲目的になりやすい)を考えれば、目に見えるもの(見えないものはNG)、わかりやすいもの(複雑なものはNG)、目立つもの(目立たないものはNG)、有名人・権力者が推奨するもの(有名人・権力者でない場合はNG)、歴史・実績があるもの(ないものはNG)、価値がなくならないもの(なくなるものはNG)などが候補となるでしょう。

 これらの条件の多くを満たすのは何か? 金(ゴールド)でしょう。以下は、「見えにくいリスク」が、金(ゴールド)市場に与え得る影響のイメージです。

図:「見えにくいリスク」が与え得る金(ゴールド)相場への影響(イメージ)

出所:筆者作成

 そう遠くない将来、世界中の市民が今そこに危機があることを認識し、「ハイブリッド戦」起因の「見えにくいリスク」から身を守る必要性を感じ、具体的に行動する時がくるでしょう(賢明な市民であれば、いずれ危機を察知し、必ずや身を守る行動をする)。

 それは金(ゴールド)相場の超長期的な上昇トレンドのスタートになるかもしれません。

「ウクライナ危機」は、ロシアが「ハイブリッド戦」を仕掛けていることや、そのハイブリッド戦が「見えにくいリスク」を生み出す元凶であることを知らせてくれています。

「見えにくいリスク」は、有事のムード(資金の逃避先需要)、代替資産(株の代わり)、代替通貨(ドルの代わり)、中央銀行の金保有、中国インドの宝飾需要、鉱山会社の動向に並ぶ、金(ゴールド)相場の動向の今後を占う7つ目の重要テーマとして、認識すべきだと考えます。

 [参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

 楽天証券の純金積立「金・プラチナ取引」はこちらからご参照ください。

純金積立

金(プラチナ、銀もあり)

国内ETF/ETN

1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN

海外ETF

GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF

投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド

外国株

ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ

国内商品先物

金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム

海外商品先物

金、ミニ金、マイクロ金(銀、ミニ銀もあり)

商品CFD(金・銀)