インフレ退治の強いメッセージ

 1月25~26日のFOMCでは、かなりタカ派色の強い決定や発言がありました。政策金利は据え置かれましたが、声明文で政策金利を、「まもなく引き上げるのが適切だ」と表明し、3月前半のテーパリング終了と3月中の利上げについて明確なシグナルを出しました。

 また、利上げ開始後にバランスシート縮小を始めると明示することで、今後の金融政策の不透明感を払拭(ふっしょく)しました。

 声明文は想定通りとマーケットは受け止めました。また、次回の会合で0.50%の利上げの可能性や、事前に予想されたテーパリングをさらに早めることや、QT(量的引き締め)に関する言及はなかったことから、株式市場はこれを好感しましたが、しかし、その後のパウエルFRB議長の記者会見中に、株はマイナスに転じました。

 その理由は、パウエル議長が記者から全会合での利上げの可能性を問われたが否定しなかったことや、また、保有資産の縮小ペースが前回より速くなるとの見通しを語るなど、想定以上にタカ派的だったことなどです。

 しかし、パウエル議長の発言は、FRBがインフレに対して後手に回ることへの警戒感を和らげるためと思われ、インフレを全力で抑えるとのメッセージを一気にマーケットに刷り込んだ感があります。

 発言直後のショックは大きく、株は下落となりましたが、1月の決定や発言はインフレ懸念後退という形で徐々にマーケットに前向きに捉えられ、効いてくることも想定されます。

 実際、NYダウ(ダウ工業株30種平均)とS&P500はFOMCのあった週間では上昇しました。今後、賃金などインフレ指標が出るたびに(4日の米雇用統計に注目)、株がマイナスにぶれることがあっても、徐々にこれまでの下落を取り返す動きがみられるかもしれません。金利は上昇しても株が上昇するなら、ドル/円やクロス円も再び円安方向に動くかもしれません。

 しかし、米国のインフレ減退の指標や景気減速の指標が出た時には注意する必要があります。

 1月のFOMCでは目一杯のタカ派色を出したため、指標によってはこのタカ派色が弱まるのではないかとの疑念が出てくるかもしれません。実際に、FOMC後に一部のFRBメンバーから少し態度を軟化させた発言もみられています。

 1月14日に発表された12月米小売売上高は予想以上の悪化となりました(▲1.9%)。この数字は景気の風向きが変わってきていることを示しているのかもしれません。

 3月に0.5%の利上げとの見方も浮上していますが、FOMCまでの経済指標が強くなければ金融正常化の風の強さが弱まることも想定されます。そうなれば、円安の力も弱まる可能性があります。