iDeCoが大きく変わる2022年

 楽天証券に口座をもつ皆さんの多くは、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を利用していると思います。掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の軽減に資する制度はなかなかありません。これをフル活用することは、資産形成における合理的な判断です。

 このiDeCo、2022年はいくつかの法律改正により内容が変わります。すでに2020年5月に成立済みの法律が、順次施行されているものです。2022年はiDeCoの利用範囲を大きく拡大する規制緩和が4月、5月、10月と連続して実行されます。

 今回はそのポイントを「誰に活用のメリットがあるか」という視点から解説してみたいと思います。

2022年4月 受取開始時期を75歳まで遅らせることが可能に

 現行では、確定拠出年金の受取開始時期を「60歳から70歳まで」の間で自由に決定できます。一人一人のライフプランに応じた選択ができるというのは画期的なことです。一方で、2001年に成立した法律が人生100年時代の社会を想定しきれていなかったという問題もありました。

 法律を作った当時は、70歳まで受け取らないということは、自分の年金としての受け取りを考えていない、つまり、実質的には相続財産になるものを非課税投資することになる、という考えがあったようです。そのため、「70歳まで」に受け取るよう求めていたのです。

 今回の法改正では、人生100年時代の到来を見据えて、75歳まで受取開始の時期を遅らせることができるようになります。これは、公的年金の繰り下げ受給が75歳まで引き上げられることともバランスがとれています。

 75歳から20年間有期年金を受ければ95歳までですから、おおむね人生100年に対応した年金ということになります。

 一方で、早く受け取るほうは変化がありません。例えば、以前紹介した繰り下げ受給への新アプローチ「WPP」では、「あえて老後の前半戦にiDeCoを解約し、公的年金の繰り下げを目指す方法もある」としていますが、今回の法改正はこうしたアプローチを邪魔することもないのです。

 現行の「60~70歳の間で受取開始」という考えから「65~75歳」と時期をずらすのではなく、「60~75歳の間」と時期を拡大したことに、改正のポイントがあります。

 この改正を活用するメリットがあるのは

  • 働いて所得があるのでiDeCoの取り崩しを急ぐ必要がなく、先送りしたい人
  • 老後の取り崩しの優先順位を検討し、iDeCoの資産を後回しにして非課税投資を継続したい人

 といったところでしょうか。無理をして75歳まで受け取りを遅らせるというよりは「遅らせる自由もある」というふうに考えてみてください。