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 2021年は、世界の多くの国・地域において『インフレ』が加速し、歴史的な高水準となりました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の財政支出による需要増などで供給が不足したことや、原油をはじめとする資源価格が高騰したことが背景にあります。『インフレ』を抑制するため、各国の中央銀行は量的緩和の縮小(テーパリング)や利上げなど金融引き締め方向へかじを切り始めました。

【ポイント1】2021年は世界的に『インフレ』が急加速し、歴史的な高水準に

 2021年は、世界の多くの国・地域において『インフレ』が加速し、歴史的な高水準となりました。米国の11月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比+6.8%に達し、約39年ぶりの高水準となりました。ユーロ圏の11月のCPI(速報値)は同+4.9%となり、統計をさかのぼれる1997年以降で最大の伸びとなっています。英国の11月CPIも同+5.1%と、約10年ぶりの高さです。新興国でも、ブラジルの11月CPIが同+10.7%と約18年ぶり、メキシコの11月CPIは同+7.4%と約21年ぶりの高水準となりました。

 ただし、日本の10月のCPIは、携帯料金引き下げの影響などもあり、同+0.1%と低水準が続いています。

【ポイント2】供給制約や資源価格高騰が要因

『インフレ』を加速させている主な要因は、新型コロナの感染拡大後の各国の財政支出増による急激な需要増加に伴う供給不足や、原油をはじめとする資源価格の高騰です。経済の急回復でサプライチェーンが混乱したことによる供給制約に加え、原油価格などの上昇がガソリン代や電気料金を押し上げ、物価上昇圧力が強まりました。新興国においては、自国通貨安も『インフレ』の押し上げ要因となっています。

【今後の展開】中央銀行は『インフレ』抑制に向け金融引き締め方向へ

『インフレ』が加速するなか、世界の中央銀行は金融引き締め方向へかじを切り、金融政策の正常化に動き出しています。米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、テーパリングの加速を決め、2022年に3回の利上げを見込みました。欧州中央銀行(ECB)は16日、コロナ危機対応で導入した緊急買い取り制度の廃止などを決め、異例の金融緩和を徐々に縮小していく方針を示しました。イングランド銀行は16日、約3年ぶりに政策金利を引き上げました。また、ブラジルが8日に7会合連続の利上げを決め、メキシコも16日に5会合連続の利上げを決めるなど、自国通貨安に伴う『インフレ』に対処するため新興国は連続利上げを実施しています。

『インフレ』は供給制約が和らぐにつれて、先行き落ち着いていくと期待される一方、新型コロナのオミクロン型の感染が広がり、供給網の目詰まりが長引く恐れもあり、今後も『インフレ』動向が注目されます。