今後の見極めポイント、春先以降の物価に注目
今後のドル/円のシナリオを考える際は、すでに織り込まれたこれらの要因が思惑通りに進むかどうかを見極めることが重要になります。
極端ないい方をすれば、思惑通り順調に進んで115円台への上昇、思惑以上に正常化プロセスが早まればそれ以上の円安進行、そして思惑よりも遅く進行すれば失望感からの円高方向に動くということが予想されます。
今年最後のFOMC(米連邦公開市場委員会)から来年にかけて、以下のポイントを見極めることが重要になりそうです。
【1】12月14~15日のFOMCでテーパリングの加速が決定されるかどうか
11月のFOMCでは月額1,200億ドルの資産購入を11月から毎月150億ドルずつ減額を決定。加速の場合、月300億ドルずつ減額するのか、月450億ドルずつ減額するのか。加速しない場合、テーパリングの終了は6月。加速の場合、2月か3月に終了。
【2】マーケットが期待する利上げ時期は、来年後半から6月に早まっている。それまでインフレが高止まりし、長期化するような環境が続いているのかどうか
特に、原油動向に注目。一時85ドル台に上昇したWTI(ニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されている、米国産の良質な原油)は70ドル前後で推移しており、再上昇がなければ、インフレ上昇を抑制する可能性がある。
また、供給不足やサプライチェーンの混乱は時間がたてば解消していくことが予想され、春先以降、その兆候がみられ始めた場合、利上げ後倒し観測が浮上する可能性。
【3】オミクロン株の感染が拡大し、経済規制が実施され、景気回復の足かせになるのかどうか
オミクロン株の感染拡大によって景気回復が停滞すると、インフレ上昇圧力が弱まることが予想される。ただ、現時点ではオミクロン株の正体は不明であり注意が必要。
重症化率が低い、既存ワクチンの効果が期待できるなど、新たなワクチン開発が短期間で可能になれば、景気回復の足かせにならず、利上げ期待は持続することが予想される。
以上のような注目ポイントの中で、ハッサクは特に【2】に注目しています。春先以降、インフレの上昇要因であった供給不足が解消され、インフレ上昇の頭打ち傾向が見られると、6月利上げのシナリオが後退する可能性があります。
そして11月には米国の中間選挙が控えているため、後倒しになればなるほど利上げは政治的に困難な環境になるかもしれません。場合によっては、来年中に利上げができないシナリオも浮上してくるかもしれません。
そうなれば、来年は円安というよりも円高が主流になるかもしれません。現在の大勢のシナリオからはかなりかけ離れた見方かもしれませんが、相場に思い込みは禁物です。常に柔軟な思考で臨みたいものです。