今年もあっという間にこの時期になりました。アメリカでは明日が感謝祭の祝日。明後日の「ブラックフライデー」を皮切りに年末商戦が始まります。今年は特に夏季、個人消費関連の経済指標が良くなかった事や、10月の一部政府機関閉鎖の影響で、年末商戦の動向が懸念されてきました。しかし今年はこれまでS&P500指数が26%の上昇と、10年ぶりの高い上昇率となっている事もあり、ここにきて資産効果から、特に高額商品の売れ行きが絶好調の兆しを見せています。このような中、今年の年末商戦はどんな商品がヒットするのでしょうか?ホリコ・キャピタルでは毎年この時期、株価動向から年末商戦のヒット商品を占うレポートを作成していますので、その一部をご紹介したいと思います。

(ヒット商品、会社名、過去1年間の株価上昇率、の順)

1. テスラ・モデルS(テスラモーターズ TSLA +292%)

資産効果の恩恵を最も受ける会社の一つとして電気自動車のテスラモーターズが挙げられます。今年1-3月期は同価格帯(7万ドル前後)で、メルセデスやBMWを上回る販売台数を記録しました。人気のセダンタイプ「テスラ・モデルS」は最近出火事故で問題になったものの、引き渡しは約1年待ちの状況。同社の株価はここ1年で4倍近くになっています。

2. 次世代ゲーム機(ゲームストップ GME +84%)

ソニーが約7年ぶりに次世代家庭用ゲーム機「プレイステーション4」を米国で11月15日に、マイクロソフトがその翌週に約8年ぶりとなる新型機「Xbox One」を発売、いずれも既に品切れ状態という人気です。次世代ゲーム機の市場投入をきっかけに、買い替え需要やゲームソフトの売上も盛り上がりを見せる見通しです。中古品のハードウェアやソフトウェアの販売を手掛けるゲームストップの株価はこの1年で84%の上昇となりました。

3. フューエルバンドSE(ナイキ NKE +67%)

ナイキが11月に発売。スマートフォンの普及と健康志向の高まりを受けて、リストバンド型の活動量計がヒット商品になりそうです。スマートフォンと連携し、万歩計や日々の運動カロリー消費量を表示させる機能を有しています。価格は100-150ドルと手頃で、アプリの機能も拡充してきていることから、現状においてはこのリストバンド型が優勢と言えます。スマートウォッチ型も発売されつつありますが、現状においてはスマホ機能付き時計の域を出ず、端末価格の高さや対応アプリの少なさから需要は限られると見られます。

4.ハンドバッグ(マイケル・コース KORS +59%)

去年もこのコーナーでご紹介したアパレル・ブランドのマイケル・コース。今年はハンドバッグの売上が絶好調です。高級ハンドバッグ市場におけるマイケル・コースの市場シェアは今年15%に上昇。この市場で長年トップのシェアを維持してきたコーチ(COH)を追い上げています。株価も、コーチの株価がこの1年ほぼ変わらずなのに対して、マイケル・コースの株価は59%の上昇となっています。

5. スターウォーズ・グッズ(ディズニー DIS +47%)

子供向けには例年、キャラクター玩具が人気です。去年末、ディズニーはスターウォーズのライセンスを有するルーカスフィルムを買収しましたが、相乗効果が既に表れてきている形で、この1年間で株価は47%の上昇となりました。ディズニーは今月上旬、映画「スター・ウォーズ」シリーズの最新作の劇場公開が2年後の2015年12月18日になると発表しました。年末商戦に向けての関連商品プロモーションの一環と見られます。

6.アクションカメラ(ガーミン GRMN +35%)

携帯端末以外で急成長が期待できる分野に、モータースポーツやサーフィンなどのアクティブスポーツを楽しむ人々にターゲットを絞った小型・防水・高画質のアクションカメラがあります。GPS端末メーカーの老舗、ガーミンがこの分野に参入し、今年9月から製品の発売を始めました。業績への寄与は来年以降となるものの、アクションカメラ市場は近年急成長を遂げており、同社株は業績期待を織り込むかのように上昇しています。

これらヒット商品を出してくる会社がある一方で、年末商戦の先行きが明るくない会社もあります。例えばアパレルのアバクロンビー&フィッチ。一時NY5番街の旗艦店には、年末商戦でなくても行列が出来るほどの人気でしたが、ここ1年で株価は20%以上の下落となっています。CEOの度重なる問題発言も顧客離れの原因となっているようです。

最後に私個人のイチオシ商品、それは先日発売された「iPad mini Retinaディスプレイ」です。私は日頃読み物が多い事もあり、アマゾンのキンドル発売以降、これまでキンドル3台、iPad4台を買い替えてきましたが、今回が最も満足度の高いアップグレードでした。iPadの高機能を備えつつ、より持ち運びが便利なサイズにもかかわらず、画面が非常にクリアで読みやすいという、携帯端末の集大成と言えるのではないでしょうか。アップルの株価は今年ほぼ横這いですが、商品に対する満足度が高く、財務体質が強固でバリュエーションが低い中、見直される日もそれほど遠くないと見ています。

(2013年11月27日記)