今週発表の米国CPIが、来年の為替動向を占うカギ!

 先週の米雇用統計は強い内容でした。本来ならこの数字を受けてドル買いとなるところでしたが、米長期金利の急低下によってドル買い圧力は減退し、ドル売りとなりました。その結果、114円台は重たい水準となりました。

 米長期金利の急低下は、3日のFOMCの結果が影響し、引きずっていたようです。11月からのテーパリング開始によって材料が出尽くし、早期の利上げが否定されたことや、加えて4日の英国MPC(英国金融政策)でマーケットの過度の利上げ期待がけん制されたことから、米英の利上げ期待が沈静化し、その影響によって米英の長期金利は急低下したようです。材料出尽くしから債券のポジション調整がみられ、金利が低下したとの見方もあります。

 9月後半から続いたドル高・円安は、FRBのテーパリング期待と原油高によって進行しましたが、FRBのテーパリング決定によって材料が出尽くし、一服感が出たようです。原油上昇も一服感が出てきているため、物価や原油の一段高が進まない限り、ドル/円の115円超えは、年内は難しいかもしれません。

 また、注目されていた「黒田ライン」と呼ばれる115円近辺の実質実効為替レートについては、黒田日銀総裁は記者からの質問に対してコメントを控えるとし、現在の若干の円安については日本経済にとって総合的にみてプラスとの認識を示し、円安警戒感を示しませんでした。

 ドル/円は、この発言直後には若干円安に反応しましたが、その後はこの発言を無視するかのように円高となりました。黒田総裁が円安警戒感を示さなかったのは驚きましたが、それ以上に発言後、円高に進んだのはもっと驚きました。

 黒田発言後のドル/円の動きをみていると、IMM(シカゴ・マーカンタイル取引所:CMEにある国際通貨市場)のネット円ポジションが、いまだ10万枚をキープしていることからも、市場全体のドル/円のロングポジションは相当貯まっていることを示唆しているのかもしれません。

 物価や原油が一段高にならなければ、FOMC、米雇用統計後の債券のポジション調整のように(米長期金利急低下のように)、ドル/円も年内のポジション調整がまだ進むかもしれません。

 それまでは、今回の円安の第2波の起点である112円台前半から115円で足踏みし、年内にポジションをこなしてから、年明けに来年のFRBの利上げを材料にしてドル高・円安に進むのかどうかに注目です。

 まずは、今週10日発表の米国CPI(消費者物価指数)に注目です。数字だけでなく、発表後のドル/円の動きに注目です。米雇用統計発表後のように強い数字が出ても、ポジション調整のような動きになるのかどうか、注目したいと思います。