11月初旬の、3つの重要イベントを振り返る

 11月は重要イベントが相次ぐ幕開けとなりました。11月2~3日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)、4日のBOE(英国中央銀行)のMPC(金融政策委員会)、5日の米雇用統計が続き、その結果はドル高要因でしたが、ドル/円は1ドル=114円台を維持できず、113円台も割れてしまいました。

 11月のこれまでの値幅は約1円超と10月の値幅(約4円超)と比べるとたいした動きではありませんが、その動きは予想外の展開となりました。

 これまでの重要イベントを振り返ってみますと、

(1)FOMCは、マーケットの予想どおり、政策金利を据え置き、テーパリング(資産購入の段階的縮小)の開始を決定しました。現在の月額1,200億ドル(米国債800億ドル、住宅ローン担保証券400億ドル)の資産購入を11月から毎月150億ドルずつ(米国債100億ドル、住宅ローン担保証券50億ドル)減額する方針を示しました。

 一方、声明文ではインフレ加速について、前回の「一時的(transitory)な要因」から「一時的と予想される要因」と、インフレに対する姿勢を若干後退させながらも「一時的」との判断自体は維持しました。

 また、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長はFOMC後の記者会見で「まだ利上げのタイミングではない」「FRBは利上げに関して忍耐強くなれる」と発言し、利上げについては慎重な姿勢を示しました。

 これら一連の内容を受けて、ドル/円は一時114.20円近辺まで上昇しました。しかし、それ以上買いが進まず、ドル買いに強く反応するという動きにはなりませんでしたが114円台は維持しました。米株は上昇し、米長期金利も上昇しました。

(2)4日のBOEは、政策金利と資産買入額の据え置きを決定しました。一部では利上げが予想されていたため失望感からポンド/ドルは急落しました。また、ベイリーイングランド銀行総裁は、マーケットの過度の利上げ期待をけん制したことからポンドは続落。

 そのドル買いがドル/円にも波及したため、一時114円台に乗せました。しかし、英国金利の下落の影響から米金利が低下し、クロス円の下落も加わりドル/円は114円台を維持できず、売り優勢となり113円半ばまで下落しました。

(3)5日の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月を上回る53.1万人、失業率は4.6%と0.2%改善し、予想以上に改善されたことが好感され、再び114円台に乗せました。

 しかし滞空時間は短く、その後、米10年債利回りが急低下し、1.5%を割り込むと、ドル/円も113.30円近辺まで売られました。米株は雇用統計改善を受けて上昇しました。

今週発表の米国CPIが、来年の為替動向を占うカギ!

 先週の米雇用統計は強い内容でした。本来ならこの数字を受けてドル買いとなるところでしたが、米長期金利の急低下によってドル買い圧力は減退し、ドル売りとなりました。その結果、114円台は重たい水準となりました。

 米長期金利の急低下は、3日のFOMCの結果が影響し、引きずっていたようです。11月からのテーパリング開始によって材料が出尽くし、早期の利上げが否定されたことや、加えて4日の英国MPC(英国金融政策)でマーケットの過度の利上げ期待がけん制されたことから、米英の利上げ期待が沈静化し、その影響によって米英の長期金利は急低下したようです。材料出尽くしから債券のポジション調整がみられ、金利が低下したとの見方もあります。

 9月後半から続いたドル高・円安は、FRBのテーパリング期待と原油高によって進行しましたが、FRBのテーパリング決定によって材料が出尽くし、一服感が出たようです。原油上昇も一服感が出てきているため、物価や原油の一段高が進まない限り、ドル/円の115円超えは、年内は難しいかもしれません。

 また、注目されていた「黒田ライン」と呼ばれる115円近辺の実質実効為替レートについては、黒田日銀総裁は記者からの質問に対してコメントを控えるとし、現在の若干の円安については日本経済にとって総合的にみてプラスとの認識を示し、円安警戒感を示しませんでした。

 ドル/円は、この発言直後には若干円安に反応しましたが、その後はこの発言を無視するかのように円高となりました。黒田総裁が円安警戒感を示さなかったのは驚きましたが、それ以上に発言後、円高に進んだのはもっと驚きました。

 黒田発言後のドル/円の動きをみていると、IMM(シカゴ・マーカンタイル取引所:CMEにある国際通貨市場)のネット円ポジションが、いまだ10万枚をキープしていることからも、市場全体のドル/円のロングポジションは相当貯まっていることを示唆しているのかもしれません。

 物価や原油が一段高にならなければ、FOMC、米雇用統計後の債券のポジション調整のように(米長期金利急低下のように)、ドル/円も年内のポジション調整がまだ進むかもしれません。

 それまでは、今回の円安の第2波の起点である112円台前半から115円で足踏みし、年内にポジションをこなしてから、年明けに来年のFRBの利上げを材料にしてドル高・円安に進むのかどうかに注目です。

 まずは、今週10日発表の米国CPI(消費者物価指数)に注目です。数字だけでなく、発表後のドル/円の動きに注目です。米雇用統計発表後のように強い数字が出ても、ポジション調整のような動きになるのかどうか、注目したいと思います。