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問題先送り第二弾
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

問題先送り第二弾

2011/1/11
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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新年明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。

来週、パシフィコ横浜で行われる楽天証券新春講演会の準備をするにあたり、ちょうど1年前に同講演会で講演させていただいた内容を読み返してみました。主な内容は以下の通りでした。

  • 金融危機以降、世界の中央銀行はマネーサプライを積極的に増加させてきている一方、日本は殆ど変わらず。為替相場は需要と供給で決まるのだから、これでは円高が進むのは当たり前だ。今年(2010年)も当然のように円高が進むだろう(当時93円台)。

  • 日本では円高が進行すると必ず為替介入という話が出る。しかし相場というものは、結局は需給を反映するもので、需給は上記の通りだ。介入のような小手先の操作は円高解決の手段ではない。

  • 為替介入といえば不思議なのは、債務超過のはずの外国為替資金特別会計から3兆円近くが「埋蔵金」と称して一般会計に振り替えられた事。民間企業なら粉飾まがいの会計操作だ。

  • 株式相場は2009年は上昇、2010年は下落すると見てきたが、実際2009年は大きく上昇した。そして2010年下落するという見方は変わらない。

  • 株式相場が下落すると見る理由は、金融危機を通じてアメリカ政府が先送りした多くの問題はいずれ顕在化してくると見るからだ。2010年はそのきっかけがいくつかある。

    • (1) FRBによる住宅ローン証券の購入が2010年3月をもって終了する。
    • (2) 2010年末には「ブッシュ減税」がサンセット(終了)となる。
    • (3) 2009年2月以降の「オバマ景気対策」は2010年半ばに息切れする。
  • これらの影響は、金融危機を通じて財政を拡大させたアメリカ政府と、一般の住宅ローン保有者に表れてくるだろう。

  • 財政拡大によって増発された国債はFRBが買っている。一言で言えばアメリカはドルをバラ撒いているだけだ。このような状況では投資家は、人間がいくらでも発行できてしまう「通貨」というものに対する信用を無くすだろう。自ずから資金は金に向かうはずだ(当時金は1,120ドル)。

振り返ってみると、為替や金はこの通りの動きとなりました。アメリカの主要株価指数であるS&P500指数も2010年8月末まではマイナス6%でした。しかしその後、上記(1)(2)(3)の全てに変化が生じました。

  • (1) 2010年8月末、FRBバーナンキ議長が証券購入再開を示唆。
  • (2) 11月の中間選挙に向けて共和党が大躍進、「ブッシュ減税」延長の可能性高まる。
  • (3) 12月、ブッシュ減税延長と共に、失業保険給付延長、社会保障減税等。

この結果S&P500指数は9月以降反発、12%の上昇で2010年を終える事になりました。

このコラムでも何度か書かせていただいた通り、アメリカは金融危機の原因となった問題を先送りしてしまっています。目先は厳しくても、問題と向き合って解決していけば、自ずから回復は見えてくるはずです。そしてその回復は非常に力強いものとなるはずです。2010年の例で言えば、FRBが証券購入を再開せずに、ブッシュ減税を延長しなければ、景気は低迷したままだったかもしれませんが、その分住宅市場や不良債権問題の処理はどんどん進んでいった事でしょう。トンネルの先が見えれば、アメリカの株式相場は自律的な、力強い上昇が見込めたはずです。希望的観測も含めて私はそのようなシナリオを描いていました。

しかし2012年に大統領選挙を控えたアメリカにはそのシナリオを受け入れる余裕は無かったのでしょう。最近の長期金利上昇をご覧になって明らかな通り、FRBが証券を購入しようとしまいと、住宅市場や不良債権の問題は解決しません。リーマンショックの背景となったモラルハザード、「いわゆる大き過ぎて潰せない」も今や元の木阿弥です。ヨーロッパ各国の救済を見ても分かる通り、今では誤った振舞いでも救済するのは当然のようになってしまっています。これでは過剰なリスクテイクを助長しているようなものです。このような問題も再び、先送りされてしまいました。

QE1は70兆円に上るオバマ景気対策を伴い、QE2も結果的に70数兆円に上るブッシュ減税延長を伴う事になりました。「問題先送り」で相場は上昇へ(2009年4月9日)に続く「問題先送り第二弾」でしょうが、いずれも金融政策に財政政策が伴っているため、それなりの景気押し上げ効果が見込めるでしょう。一方でこのような財政支出によってアメリカの公的債務は早ければ今年3月にもGDPの100%を超える見通しです。さらに上記のような先送りされた問題は残ったままです。今年は上昇が予想される中、いつ再び顕在化するか分からないこれらの問題と対峙していかなければならない一年になりそうです。そのような中、どのような投資戦略を取るべきなのか、横浜で皆様にお話しできるのを楽しみにしています。

(2011年1月10日記)

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