毎週金曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:ASMLホールディング(ASML、NASDAQ)、ディスコ(6146)
ASMLホールディング
1.2021年12月期3Qは32.4%増収、57.8%営業増益
ASMLホールディングの2021年12月期3Q(2021年7-9月期、以下今3Q)は、売上高52.41億ユーロ(前年比32.4%増)、営業利益19.19億ユーロ(同57.8%増)となりました。
EUV露光装置販売台数は前3Q14台、今2Q9台から増加し、今3Qは15台となりました。EUV露光装置売上高は22.20億ユーロ(前年比8.7%増)となり、今2Q13.27億ユーロから増加しました(露光装置別売上高は会社側開示の構成比より楽天証券計算)。
また、1世代前のArF液浸露光装置は、前3Q11台、今2Q16台から増加し、今3Qは21台となりました。売上高は13.16億ユーロ(前年比2.0倍)となり、今2Q10.03億ユーロと比較しても大きく伸びました。10ナノ台から以前の汎用半導体の生産能力増強が寄与していると思われます。
各露光装置の売上高が計41.11億ユーロ(同32.8%増)と大きく伸びたことに伴い、保守、バージョンアップなどのサービス売上高も11.30億ユーロ(同31.1%増)と好調でした。
なお、ASMLホールディングの市場シェアは、EUV露光装置では100%(2020年)、ArF液浸露光装置では92%(2位ニコン8%、同)、KrF露光装置では77%(2位キヤノン20%、3位ニコン3%、同)となっています。
表1 ASMLホールディングの業績
表2 ASMLホールディング:売上高内訳(四半期)
表3 ASMLホールディングの機種別売上高、販売台数、単価(四半期)
グラフ1 ASMLのEUV露光装置:受注台数と販売台数
グラフ2 ASMLホールディング:露光装置の販売台数
2.受注は一服したが高水準持続
今3Qの全社受注高は61.79億ユーロとなり、今2Q82.71億ユーロから減少したものの、高水準を維持しました(グラフ3)。このうちEUV露光装置は今2Q49.00億ユーロから今3Q29.00億ユーロへ減少しましたが、ArF液浸露光装置等は今2Q33.71億ユーロから今3Q32.79億ユーロへ横ばいでした。
EUV露光装置、ArF露光装置ともに需要は旺盛であり、この需要に対応するため会社側では露光装置の生産能力増強に取り組んでいます。2020年を起点として2025年までに、EUV露光装置の生産台数を2倍以上(ウェハ処理能力ベースでは3倍以上)、DUV(ArF液浸、KrF等)露光装置の生産台数を1.5倍(ウェハ処理能力ベースで2倍)にする計画です。
この計画の線上で、会社側は2022年12月期のEUV露光装置生産能力を55台としています。EUV露光装置はTSMC、サムスン、インテルだけでなく、大手DRAMメーカー(サムスン、マイクロン・テクノロジー)でも発注が始まっています。そのため、生産能力いっぱいの55台が来期出荷されると予想されます。2021年12月期出荷予想は41~42台なので、台数では30%以上の伸びが予想されます。また、来期出荷される全台数は最新型のNXE:3600Dであり、現行のNXE:3400Cよりも15~20%生産性が高くなります。そのため、単価も高くなると思われます。
グラフ3 ASMLホールディングの新規受注高
グラフ4 ASMLのEUV露光装置:受注台数と販売台数
3.2022年12月期もEUV露光装置の出荷好調が予想されるが、検収が遅れる可能性もある
今4Q(2021年10-12月期)の会社側ガイダンスは、売上高49~52億ユーロ(前年比15.2~22.2%増)、売上総利益率51~52%、研究開発費6.70億ユーロ前後、販管費1.95億ユーロ前後より、営業利益16.3~18.4億ユーロ(同8.4~22.3%増)です。楽天証券では、この上限に近い、売上高52億ユーロ、営業利益18億ユーロを予想します。検収が間に合わず収益認識が2022年12月期1Qにずれ込むEUV露光装置の台数が発生する模様ですが、会社予想には織り込まれている模様です。
また2021年12月期通期は、楽天証券では売上高188億ユーロ(同34.5%増)、営業利益65億ユーロ(同60.4%増)と前回予想の売上高189億ユーロ、営業利益64億ユーロとほぼ同水準の業績を予想します。
一方来期2022年12月期の楽天証券業績予想は、前回の売上高250億ユーロ、営業利益92億ユーロから、売上高240億ユーロ(同27.7%増)、営業利益88億ユーロ(同35.4%増)に下方修正します。EUV露光装置は前述のように55台を出荷すると思われますが、2021年12月期同様顧客工場での設置を最優先する可能性があり、その場合検収が遅れ、2023年12月期に収益認識がずれ込む台数が発生する可能性があります。
また、ArF液浸露光装置も生産能力に限りがあり、今期以上の伸びが難しくなる可能性があります。
このように、来期は今期に比べ業績の伸びが一旦鈍化すると予想されますが、EUV露光装置の長期的な成長性には変わりはないと思われます。
なお、9月29日開催のインベスターデイにおいて会社側は2025年12月期の売上高を240~300億ユーロと予想しています。私の予想では来期にもこのレンジの下限に到達する可能性があります。ArF液浸露光装置などEUV露光装置以外の売上高が縮小に転じると想定している可能性もありますが、これは生産能力増強の動きと整合性がとれません。会社側が提示したのは達成可能な極めて保守的な数字と解釈すべきと思われます。
表4 ASMLホールディング:機種別サービス別売上高
4.今後6~12カ月間の目標株価は前回の950ドルを1,000ドルに引き上げる
ASMLホールディングの今後6~12カ月間の目標株価は、前回の950ドルを1,000ドルに引き上げます。2022年12月期楽天証券予想EPS 18.31ユーロに、成長性を考慮して想定PER(株価収益率)45~50倍(PEG[PERと成長率の比率から株価水準を測る指標:PER(株価収益率)÷成長率で算出]は1.3~1.4倍)を当てはめ、目標株価を860ユーロとし、これをドルに換算して1,000ドルとしました。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。