インドの経済復興と高度経済成長が注目されている
新型コロナウイルスの感染動向で「デルタ型」が最初に確認されたインドでは、今春の「感染爆発」をピークにして沈静化しています。政府系高官によると「インド全体の抗体保有率が7割程度となり、『集団免疫』を獲得した可能性がある」との説も表明されました。
ロックダウン(都市封鎖)を解除したインド経済は復興に向かい、ポストコロナでは高成長国に復帰しつつあります。
図表2は、IMF(国際通貨基金)が10月12日に発表した最新の「世界経済成長見通し」(World Economic Outlook)です。
世界経済も米国経済も2021年は実質ベースで+6.0%の実質成長率が見込まれていますが、インドの実質成長率は+9.5%と中国(+8.0%)よりも強い景気回復が予想されており、「高度経済成長国」への移行が見込まれています。
実際、新規感染者数が減少するなか、生産活動や輸出などビジネス関連指標はコロナ危機(2020年)前の水準を超えてきました。インドの8月の鉱工業生産指数は前年同月比+11.9%の伸び、9月の輸出は前年同月比で+21.4%伸びました。
インド中央銀行は、2021年の実質成長率の見通しをIMF予想と同様の+9.5%と予想しています。IMFによると、2022年のインドの実質成長率は+8.5%と予想されています。
<図表2:インドの高成長期待は強い(IMF経済予想)>
インド株式堅調を支える要因として、「中国からインドへのマネーシフト」も言われています。図表3は、米国市場に上場されているインド株式ADRと中国株式ADRの平均的な値動きを示す株価指数を過去1年で比較したものです。
中国と米国が「覇権争い」で外交関係を悪化させ、共産党政府当局は、IT関連、教育関連、不動産関連の上場会社に締め付けを強化。最近では中国恒大集団の信用危機に象徴される「不動産バブル調整」が中国の投資活動や景気の減速に与える影響が懸念されています。
一方のインドは中国と並ぶ「新興国市場の雄」ですが、アジアにおいて議会制民主主義・資本主義の歴史が古く、内政面や外交面が比較的安定しています。
米国、豪州、日本とは民主主義と太平洋地域の安全保障の枠組みを共有する同盟関係(クアッド)に属することも知られています。図表3でみるとおり、米国市場のADR投資マネーが総合的なリスクバランスを勘案して中国からインドにシフトしている傾向が見受けられます。