世界市場でインド株式の優勢が目立っている

 米国市場ではNYダウ(ダウ工業株30種平均)、S&P500種指数、ナスダック総合指数など主要株価指数が戻り基調を鮮明にしています。香港市場も一時の下落傾向から底入れ感を強めています。複数の悪材料をこなした「秋の株安」を経て、年末高に向けた環境が整ってきました。

 米国市場では、7-9月期の企業決算とガイダンス(業績見通し)発表が概して市場予想を上回り、株価復調につながっています。

 ただ、資源高やサプライチェーンの乱れ(供給不足)を起因とするインフレ警戒感は根強く、債券市場で試算される期待インフレ率は2.60%に上昇。長期金利(10年国債利回り)が1.66%に達したことが懸念材料です(20日)。

 こうしたなか、本稿では世界市場のなかで堅調を続けるインド株式に注目します。図表1は、約1年前(2020年10月初)からのインド、米国、日本、中国のMSCI株価指数のパフォーマンスを比較したものです。

 今年春以降に中国株や日本株が停滞に転じた一方、インド株が米国株に対してさえ優勢を続けている点が目立ちます。世界市場が調整入りした9月から10月にかけても、インド株式は最高値を更新する堅調を示してきました。

 なお、同じ「新興国市場の雄」でありながら、インド株と中国株のパフォーマンス格差には「ワニの口」的な印象を感じざるを得ません。米国上場ADR(米国預託証券)市場では、「中国からインドへの資金シフト」もみられます。

<図表1:インド株式が相対的な優勢を続けている>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年10月初~2021年10月20日)

インドの経済復興と高度経済成長が注目されている

 新型コロナウイルスの感染動向で「デルタ型」が最初に確認されたインドでは、今春の「感染爆発」をピークにして沈静化しています。政府系高官によると「インド全体の抗体保有率が7割程度となり、『集団免疫』を獲得した可能性がある」との説も表明されました。

 ロックダウン(都市封鎖)を解除したインド経済は復興に向かい、ポストコロナでは高成長国に復帰しつつあります。

 図表2は、IMF(国際通貨基金)が10月12日に発表した最新の「世界経済成長見通し」(World Economic Outlook)です。

 世界経済も米国経済も2021年は実質ベースで+6.0%の実質成長率が見込まれていますが、インドの実質成長率は+9.5%と中国(+8.0%)よりも強い景気回復が予想されており、「高度経済成長国」への移行が見込まれています。

 実際、新規感染者数が減少するなか、生産活動や輸出などビジネス関連指標はコロナ危機(2020年)前の水準を超えてきました。インドの8月の鉱工業生産指数は前年同月比+11.9%の伸び、9月の輸出は前年同月比で+21.4%伸びました。

 インド中央銀行は、2021年の実質成長率の見通しをIMF予想と同様の+9.5%と予想しています。IMFによると、2022年のインドの実質成長率は+8.5%と予想されています。

<図表2:インドの高成長期待は強い(IMF経済予想)>

(出所)IMFの世界経済見通し(2021年10月改定)より楽天証券経済研究所作成

 インド株式堅調を支える要因として、「中国からインドへのマネーシフト」も言われています。図表3は、米国市場に上場されているインド株式ADRと中国株式ADRの平均的な値動きを示す株価指数を過去1年で比較したものです。

 中国と米国が「覇権争い」で外交関係を悪化させ、共産党政府当局は、IT関連、教育関連、不動産関連の上場会社に締め付けを強化。最近では中国恒大集団の信用危機に象徴される「不動産バブル調整」が中国の投資活動や景気の減速に与える影響が懸念されています。

 一方のインドは中国と並ぶ「新興国市場の雄」ですが、アジアにおいて議会制民主主義・資本主義の歴史が古く、内政面や外交面が比較的安定しています。

 米国、豪州、日本とは民主主義と太平洋地域の安全保障の枠組みを共有する同盟関係(クアッド)に属することも知られています。図表3でみるとおり、米国市場のADR投資マネーが総合的なリスクバランスを勘案して中国からインドにシフトしている傾向が見受けられます。

<図表3:米国上場のインド株ADR指数と中国株ADR指数の推移>

*S&P/BNY Mellon India ADR IndexとS&P/BNY Mellon China ADR Indexの推移を示したもの
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年10月初~2021年10月20日)

国際分散投資に活用できるインド株式連動型ETFを知る

 インドの現地株式に投資するにあたっては、個別銘柄リスクと比較的高い取引コストの壁があります。日本の居住者が比較的簡単にインド株式の成長に沿う投資成果を目指すには、東証上場ETF(上場投資信託)があります(図表4)。

 本ETF(東証コード:1678)のベンチマークは、インドのCNX Nifty 50指数(円換算)です。同指数は、インドのナショナル証券取引所に上場する企業のうち時価総額、流動性、浮動株比率などで選定された主要50銘柄で構成されています。

 また、同ETFは現物株式ではなく、シンガポールで取引されているNifty50指数先物に投資している点も特徴です。運用・管理は野村アセットマネジメントで、運用純資産は約122億円となっています。

 売買単位は100口単位で、直近の一口当たり単価251円(20日終値)で換算すると、2万5,000円程度からインド株式市場に分散投資するポートフォリオを保有することが可能です。

 国際分散投資のコア・サテライト戦略のサテライト部分の役割を担う投資ツールの一つとしてご活用いただけると思います。利益確定売りが先行して取引価格が下落した場面で押し目買いを実践することを検討したいと思います。

<図表4:インド株式市場に連動を目指す東証上場ETFに注目>

*上記は参考情報であり、特定の投資商品を推奨するものではありません。
*CNX Nifty50種指数は、インド証券取引所に上場する大手企業50社で構成される時価総額加重平均指数です。
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2018年初~2021年10月20日)

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