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2010年後半に向けての米国経済・株式相場の見通し(2)
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

2010年後半に向けての米国経済・株式相場の見通し(2)

2010/7/23
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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これは去る7月4日及び10日に東京、大阪で開催された、楽天証券サービス開始11周年セミナーでの講演を要約したものです。前回に続き、今回は二回目です。

今年前半まで、皆さんはよく「アメリカの住宅市場回復」などとするニュースをご覧になっていたのではないでしょうか? それでは本当に回復してきたのか見てみましょう。アメリカの代表的な住宅価格指数であるケースシラー住宅指数は2006年5月に206.11の最高値を付けた後、3年後の2009年5月に140.77の安値を付けました。そして最新である2010年4月の値は146.45となっています。高値32%下落した後、約1年かかって僅か4%上昇したものを、市場の回復と言えるでしょうか? 私には底這いにしか見えません。

しかもその約1年間は政府が全力を挙げて住宅市場をサポートしてきた期間でした。住宅ローン条件変更プログラム(HAMP)によって問題が先送りされ、連銀は住宅ローン金利の押し下げを狙って住宅ローン等の証券化商品を1.25兆ドル購入してきました。さらにオバマ景気対策の一環として、新規住宅購入者には8,000ドルの税務控除が与えられてきました。しかしここに来て、金利の低下によってHAMPの対象となるような住宅ローンは急減、連銀は今年3月末をもって住宅ローン等の証券化商品の購入を終了しました。新規住宅購入者に対する税務控除も今年4月末まで延長されましたが、遂に終了しました。これら、政府が全力を挙げて住宅市場をサポートした結果が、2009年5月から2010年4月にかけてのケースシラー住宅指数4%上昇だったのです。今後サポート策が無くなって、住宅市場がどうなるかは明らかだと思います。

さらに今後、厄介な住宅ローンが条件変更をむかえる時期に入ります。これはオプションARM(変動金利)型住宅ローンと呼ばれるものです。
どんな住宅ローンかというと、以下の通りです。通常の住宅ローンでは月々、ひと月の利息分+元本の一部を返済します。しかしオプションARMにおいては当初5年間、元本どころか、ひと月の利息分以下の返済金額で良い、というものです。例えば5,000万円の通常の住宅ローンで、月々利息20万円+元本相当分1万円分の合計21万円を返済しなければならない所、当初の5年は月々10万円以上の好きな金額を返済すれば良い(オプション)、とするものです。最低返済額の10万円を返済していくとすると、利息分の支払が10万円足りないわけですから、当然翌月には元本が5,000万円から5,010万円に増加しています。5年後には元本は5,600万円に膨れ上がっています。

好きな金額を返済すれば良いのは当初の5年だけですから、5年後には通常の返済金額に戻ります。これをリキャストといいます。すると5年後に返済金額はどうなるか。まず元本が5,000万円から5,600万円に増加していますから、利息は12%増加、即ち20万円から22.4万円になります。加えて元本相当分は12%増加しているばかりでなく、既に5年間経過している分、例えば1万円から1.15万円に増加しているはずです。すると合計返済金額は23.55万円。それまで月々10万円しか返済していなかったのに、5年経ったリキャストの時点でいきなり返済金額が倍以上になってしまうという図式です。

どうしてこのような住宅ローンが人気だったのでしょうか? 当初の返済額が低いという点で、住宅購入者にとっての利点はすぐに分かると思います。しかしこの住宅ローンは銀行にとっても好都合でした。というのは当初の5年間、勝手に元本が増えていく部分について銀行は会計上、新規の貸出として処理できたのです。実質的には返済の延滞に近い性質であるにも拘わらず、です。貸借双方の利害が一致する形で、この住宅ローンは2005年夏から急速に伸び、2006年後半にピークをむかえました。という事は当初の5年間が終わる時期、即ちリキャストの時期は正に今頃(2010年7月)から本格化し、2011年後半にピークをむかえる事になります。

当初、オプションARM住宅ローンのリキャストは、住宅市場にとっての核爆弾とも言われるくらい恐れられていました。推計で住宅バブル崩壊の初期に問題となったサブプライム・ローンと同規模の残高があるのが一つの理由です。しかしここに来て住宅ローン金利が再び急低下してきた事で、当初懸念されていたほどの影響はないのではないかとも言われています。実際の所、リキャストが本格化してみないと何とも言えませんが、程度の差はあれ、今後新たな住宅市場へのマイナス要因である事は間違いありません。2007年以降、アメリカの資産デフレは住宅にバトンタッチされましたが、このように考えていくと、残念乍ら資産デフレはまだ続いていくと考えざるを得ません。

アメリカの歴史上、2000年3月以降のナスダック暴落に始まる資産デフレに匹敵するのは1929年の株価大暴落に始まった大恐慌の時くらいしかありません。その当時と株価推移を比べてみると、3年弱の暴落の後、5年近く反発し、その後1年強下落した後1年半反発するというパターンは非常に良く似ており、これは市場でもよく取り上げられる話題になっています。そして今後もそのパターンを辿るとすると、この先下落相場に入り、今後2-3年は再び下値トライという事になります。私はこのパターンに嵌まるには、当時このような相場環境に追いやった、2つのマクロ環境が満たされる事が条件と考えていました。むしろこの1年ほどは、アメリカ経済は当時とは異なる環境下にありました。しかしここに来て、マクロ環境は急速に当時の2条件を満たす方向に動いているのです。

(2010年7月22日記、次号に続く)

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