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相場の転換点に「大き過ぎて潰せない」
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

相場の転換点に「大き過ぎて潰せない」

2010/3/15
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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先週、ニューヨーク大学ビジネススクールのパネル討論に出席させていただく機会がありました。テーマは「米国金融規制の実態」。意外だったのは、冒頭で司会の方が、金融規制に反対か賛成かについて聴衆の方々に挙手を求めたところ、過半数の方が反対に手を挙げられた事でした。このような状況を反映するかのようにオバマ大統領が提唱した新金融規制、いわゆるボルカー・ルールはここに来て上院で審議が難航。大手金融株は審議の難航を嘲笑うかのように上昇し、最近の米国株式相場上昇のけん引役となっています。

ここ一年半の米国株式相場は「大き過ぎて潰せない」と共に歩んできた、と言っても過言ではありません。そもそも2008年9月のリーマン・ショックは「大き過ぎて潰せない」という前提が崩れたショックでした。そして相場が底を打ったのはそれから半年後の2009年3月、財務省が大手19行を実質的に保護する、いわゆる「やっぱり大き過ぎる所は潰さない」方針を表明したのがきっかけでした。

米国経済も株式相場も順調に回復してきた今年初め、マサチューセッツ州の上院補欠選挙で民主党候補がまさかの敗北を喫した事で焦ったオバマ大統領が支持率回復を狙って持ち出してきたのが新金融規制、ボルカー・ルールでした。その内容は正に「大き過ぎる金融機関を作らない」。案の定大手金融株は2月初めにかけて急落となりました。しかし上述の通り、上院での審議が難航するにつれこれまでの「大き過ぎて潰せない」という状況に大きな変化はないとの見方が台頭、株価は回復するに至っています。

リーマンショックの原因ともなった「大き過ぎて潰せない」解決方法の本命は、そもそも「大き過ぎる金融機関を作らない」事でしょう。去年3月のように「やっぱり大き過ぎる所は潰さない」と宣言して、短期的にその場を乗り切るのは容易です。しかし短期的な痛みに耐え切れず、いつまでもそのような容易な道を選んでいると、中長期的には再びリーマンショックのような事態に至るマグマが溜まっていくだけです。とはいえ「大き過ぎて潰せない」を「大き過ぎる金融機関を作らない」事によって解決しようとするのは簡単ではありません。

第一に、短期的な痛みを伴います。本当にボルカー・ルールがあのまま施行されると、やはり大手金融株の大きな下落は避けられないでしょう。中間選挙を8カ月後に控えたオバマ政権にとって、これは株式相場全体の下落につながりかねない大きなリスクです。第二に、外国の大手金融機関との競争があります。アメリカだけが「大き過ぎる金融機関を作らない」ように規制すると、外国の大手金融機関との国際競争に負けてしまうだけです。第三に、ウォール街の大手金融機関は既に大きくなり過ぎていて、だからこそ政治的にも大きな影響力を及ぼす事ができます。上院で審議が難航しているのも、ウォール街が共和党に強く圧力をかけているからでしょう。第四に、これはパネル討論で他のパネリストが強調されていた事ですが、大手金融機関は公共インフラとしての使命があり、大きい事は許されるべきという意見があります。

丁が出れば私の勝ち、半が出れば貴方の負け(2009年2月12日)のような余りにも理不尽な事態を防ぐため、私はやはり、短期的な痛みを伴おうとも「大き過ぎて潰せない」は中長期的視点から「大き過ぎる金融機関を作らない」によって解決すべきと考えています。しかし中間選挙まであと8カ月となり、日程的にも、インセンティブ的にも、新金融規制を積極的に推し進めようとする向きが少なくなってきているのは残念な事です。新金融規制は、結局は当初のボルカー・ルールからすれば殆ど骨抜きの状態になって近々成立に向かっていく事でしょう。しかし目先の快楽が優先され、根底では再びマグマの蓄積が始まる株式市場の状況は、非常に危険と考えざるを得ません。

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