景気は停滞局面なのか!?という問いは必要。スタグフレーションの議論はその後
ここ最近、さまざまなメディアで「スタグフレーション」という言葉を目にします。スタグフレーションとは、以下のとおり、「景気停滞時の物価上昇」を意味する合成語です。
図:スタグフレーションとは
物価上昇は、さまざまな種類の国際的なコモディティ(商品)銘柄の価格が上昇しているため、われわれの身近なところで、目に見えて、肌で、実感できます。
ガソリンや軽油(原油由来の燃料)、マヨネーズ(原油由来のプラスチック容器・食用油)、マーガリン(食用油)、一部の食肉(エサとなる穀物)などが、その例です。目先、冬の暖房シーズンを前に、電力(発電用の天然ガス)価格の上昇も懸念されます。
「物価上昇」は需要がけん引する「デマンド・プル型」と、原料価格が上昇することで起きる「コスト・プッシュ型」があります。足元、コロナからの景気回復過程にあること、異常気象や政策的な面で供給が増えにくい商品が複数あることから、現在の物価高は、両方の型によって起きていると言えます。
では、「景気停滞」はどうでしょうか。コロナ禍でもあり、肌感覚的には、万人が景気回復を実感しているとは、なかなか言えないでしょう。しかし、株価指数の値動きを見ると、別の側面も見えてきます。
以下のとおり、米国の主要株価指数の一つであるNYダウの上昇率は、金(ゴールド)や原油よりも、大きいことがわかります。景気回復を実感できている人とそうでない人の両方が存在するものの、景気の先行指標とされる株価の動向は、景気停滞を示していません。
このように考えれば、足元が、スタグフレーションなのかそうでないのかの議論は、しばらく各種統計や株価指数の動向を見た上で、冷静に判断されることになるでしょう。正直なところ、株価が急落していない以上、現在の状況にスタグフレーションを冠することは、難しいのではないでしょうか。