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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]日本株下落強まる 恒大不安 米国債務上限問題は大丈夫?
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恒大、米金利上昇不安に加え、岸田政権への期待低下で日経平均は続落

 先週(10月4~8日)の日経平均株価は1週間で722円下がり、2万8,048円となりました。7日に一時、2万7,293円まで下がりましたが、そこから反発して2万8,000円台を回復しました。

 緊急事態宣言解除、国内経済正常化への期待が高まったことで上昇してきた日経平均でしたが、中国・米国への不安が高まったことを受けて大幅安に。4日(月)に香港市場で中国「恒大集団」の売買が停止され恒大の破綻リスクがいよいよ高まったと思惑が広がり、日経平均は売り込まれました。恒大の取引は8日(金)も停止されたままです。

 米国の債務上限問題【注】への不安も継続中です。ただ、先週は米国の不安はやや低下。議会上院が7日、とりあえず12月3日まで上限を引き上げる法案を可決したので、米国債がデフォルトする問題は12月3日まで先送りされました。それを好感して週後半に米国株が反発したことが、週後半に日経平均が反発する要因となりました。

【注】米国の債務上限問題

 コロナ禍の財政出動で米国の財政赤字が拡大しています。米国債の発行上限を引き上げることを米国議会が承認しないと、米国債への利払いができなくなり、米国債がデフォルト(債務不履行)に陥ります。ところが、与党「民主党」の政策に不満を持つ野党「共和党」がすんなり上限引上げを認めないために、デフォルトの不安が出ています。最終的に議会が債務上限拡大を認めるのはほぼ確実と考えられますが、民主党と共和党の政策闘争の材料となっているため、デフォルト不安はしばらく続く可能性があります。

日経平均週足:2020年1月6日~2021年10月8日

出所:楽天証券MSⅡより楽天証券経済研究所が作成

 簡単に、昨年来の日経平均の動きを振り返ります。

【1】2020年1~3月:世界株安

 コロナショックで急落。

【2】2020年4~6月:世界株高

世界的に株が急反発。日経平均も反発。戦後最悪の景気落ち込みが続いたが、先行きの景気回復の織り込みが開始

【3】2020年7月~2021年2月:世界株高

 世界的に株の上昇加速。日経平均も上昇。世界景気・企業業績回復を好感。

【4】 2021年3~8月中旬:日本株だけ独歩安

 欧米株の上昇が続く中、日経平均は下落。政局への不安(菅首相のもとで自民党が衆院選大敗して政権が弱体化する不安)・経済への不安(ワクチン接種遅れから緊急事態宣言がいつまでも解除できない不安)から、外国人が日本株を売り。

【5】2021年8月中旬~9月17日:日本株だけ大きく上昇

 欧米株が調整する中で、日経平均が急反発。日本の政局への期待(後述)、ワクチン接種率上昇から内需回復への期待を受けて、外国人が日本株を買い。

【6】2021年9月21日~10月8日:中国・米国の不安・岸田政権への期待低下で日経平均下落

 恒大ショック収まらず。9月のドル債利払いが実施されず、30日間のデフォルト猶予期間に入っている。また、米債務上限問題がこじれていることに不安もあり、日経平均急落。ただ、米債務上限はとりあえず12月3日まで延長され、足元米不安はやや低下。