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官民投資プログラムの効果は?(2)
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

官民投資プログラムの効果は?(2)

2009/3/27
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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最近、アメリカでは金融危機への対応策として様々な策が発表されます。それもスピードがかなり早いので、日本にいらっしゃる方はなかなかついていけないのではないかと思います。ですので今一度、現在どの位置にいるのかを確認しておきたいと思います。

不良債権問題の解決に必要なのは大きく、(1)不良債権の価額を把握する事、(2)それに伴って発生する金融機関の資本不足を補う事、(3)金融機関の新規貸出し増加、です。アメリカは昨年後半にかけて不良債権問題の解決を急ぐあまり、(1)が中途半端なままに(2)に進んでしまいました。2-3月の株式相場急落はその反動が出たと言ってよいでしょう。そして先月、大手金融機関に対して、再び(1)をしっかりやろうという事になりました。これがガイトナー財務長官の発表した「ストレステスト」です。4月末までに完了する事になっています。

これとは別に、(2)から(3)への動きを進めようとするのが、今回発表された官民投資プログラム(PPIP)です。即ち、PPIPによってある程度資本不足が緩和されると同時に不良債権が切り離されるので、金融機関は新規貸し出しを進める事ができる、という訳です。しかし前号最後で申し上げたように、PPIPは一つの問題を解決しようとするために、将来他の大きな問題を孕んでしまった可能性が高いと考えています。

まず最近、金融危機対策を実施する主体として財務省とか連銀とかFDICとか、政府系の様々な主体が出てきます。難しく考える必要はありません。本質を掴むには全て「政府」と考えるのが一番です。(例えば「連銀が長期国債を購入」というニュースが出たとします。国債を発行するのは財務省ですが、財務省も連銀も「政府」と考えると国債はプラスマイナスゼロですので、結局このニュースは「連銀が紙幣を印刷してばら撒いた」と同じである事が分かります。)この考え方で今一度、このプログラムをご覧になってみて下さい。

1.銀行が額面100億円の不良債権をオークションにかける

2.民間のファンドが入札、仮に84億円で落札したとする

3. a. 落札金額の14分の1(6億円)を民間のファンドが出資
b. 14分の1(6億円)を政府が不良資産救済プログラム (TARP) から出資
c. 7分の6(72億円)をFDIC(預金保険公社)がノンリコース融資

財務省もFDICも政府です。なので84億円のうち78億円は政府がお金を出している事になります。しかも72億円はノンリコース融資なので、不良債権が値下がりして民間のファンドが返済不能になった場合、その値下がりに伴う損失は政府の負担です。即ち「官民投資プログラム」とは名ばかりで、14分の13のお金とリスクの負担をしているのは政府なのです。ちなみに最大1兆ドル規模のPPIPに対し、数多くの銀行破たんの結果FDICにはもう190億ドルしかお金が残っていないというのはご存知でしょうか?

そう言えば昨年8月、証券会社メリルリンチが「CDO(債務担保証券)を7200億円でファンドに売却」というニュースが出ましたが、実はメリルリンチは同時に、ファンドに対して5400億円のノンリコース融資を実施していたのを思い出します。5ヵ月後の今年1月、メリルリンチが巨額損失計上を発表したのはご存知の通りです。

今回例えて言えば、政府は保険を売ってその保険料を金融機関にプレゼントし、残った保険金支払のリスクだけ背負う状態になります。もちろん今後、不良債権の価値が上昇してくれれば問題はありません。しかし将来、丁半博打に負けて不良債権が値下がりする事になれば、金融安定化資金は簡単に枯渇してしまいます。その時政府は市場に、まだピストルの弾が残っているように見せかける事はできるのでしょうか?

(2009年3月27日記)

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